平成28年度国際交流プログラム

機構のオフィスにて
機構のオフィスにて

昨年度同様、国際支援事業の一環として交流プログラムを実施しました。今回は国際交流基金の助成金を一部活用し、「食と栄養」をテーマにシンポジウムや視察、交流を行いました。期間は2月1日(月)から同月6日(土)で、招聘者はアセンアン諸国の健康都市連合加盟都市から公募の結果、フィリピン6名(タガイタイ市3名とマリキナ市3名)、カンボジア1名(プノンペン市)、ベトナム2名(フエ市)、シンガポール1名の計10名となりました。


視察交流の目的は、「食と栄養」をテーマとする日本の健康都市づくりの施策や活動事例について講義や視察を通じてその経験やノウハウを相互に共有することと、招聘都市および日本支部加盟自治体や団体、支援企業との相互理解や友好関係を深め、今後の国際協力を推進することです。

東京医科歯科大学でのシンポジウム
東京医科歯科大学でのシンポジウム

※シンポジウムの内容はこちらをクリック

築地市場と和食

視察団は見学者用のベストと長くつを着用。衛生管理が行き届いた卸売場を熱心に見学し、全国各地から到着した新鮮な水産物に目を見張りました。

青果部門では、品目等階級別に区分けし段ボール箱に詰められた野菜をチェックし、「固定ぜり」と「移動ぜり」を見学しました。「固定ぜり」はせり人(卸売業者)がひな段に並ぶ買手(仲卸業者売買参加者)に対して、見本品を示しながら商品をせりにかけていくもので、「移動ぜり」では、商品が置かれた場所を次々と移動してせりを行うものです。視察団は、新鮮な野菜が次々とせり落とされる様子に圧倒されていました。

移動ぜり
移動ぜり

「食と栄養」がテーマの視察ツアーにとって、日々の食事も研修の一環です。伝統的な和食がユネスコの無形文化遺産に登録される等、健康食として世界の注目を集めています。築地市場の視察の後、視察団は典型的な和定食で一日のスタートを切りました。

昼食も「つきじ植むら湯島店」での和食です。お店に頼み、特に健康に配慮した品々を盛り付けていただきました。

西東京市役所訪問

夕方、西東京市を訪問しました。まずは丸山市長を表敬訪問。市の概要を紹介いただき、続いて担当者職員の方から健康都市の取組みについて説明いただきました。西東京市は多摩地域東部に位置します。 2001年に田無市と保谷市の合併により誕生し、人口およそ20万人を擁します。そのうち、外国人住民数は約70か国3,000年で人口の約1.5%を占めています。

西東京市の概要を説明する丸山市長
西東京市の概要を説明する丸山市長

続いて、西東京市在日アジア人、特にシンガポール及びフィリピンの主婦と食文化や健康推進について意見交換を行いました。集まっていただいたのは主婦の方々で、制度や税金、子どもたちの学校、家族の健康管理まで身近な話題で盛り上がりました。

在日アジア人との意見交換
在日アジア人との意見交換
丸山市長を囲んで記念写真
丸山市長を囲んで記念写真

視察での移動は主に公共交通機関です。宿泊先の中央区人形町のホテルから、地下鉄やJR

を使い視察先に向かいました。視察団は、効率的な運行、安全性、清潔さ、利用客のマナーのよさに終始感心していました。

東京メトロ日比谷線での移動
東京メトロ日比谷線での移動
東海道新幹線で名古屋に向かう
東海道新幹線で名古屋に向かう

愛知県尾張旭市訪問

2月3日(水)、尾張旭市にて水野市長を表敬訪問しました。同市の人口は約83,000人。日本列島のほぼ中央、愛知県の北西部に位置し東は瀬戸市、北と西は名古屋市に接しています。市域の6分の1を愛知県森林公園が占めるなど、緑豊かな環境が広がっています。

健康都市の取組の指針として、「寝たきりにさせないまちづくり」、「外に出かけたくなるまちづくり」、「住み続けたくなるまちづくり」の3つを施策の方針とする「尾張旭市健康都市プログラム」を策定しています。

また、健康都市の取組を効果的に推進するために7つのテーマを設け、そのテーマ毎に関連する事業を連携させ、一体的に実施するリーディングプランを設定しています。

リーディングプランには、「食育による健康推進」を設け、子どもから大人まで、食に対する正しい知識を身につけることで、生涯にわたる健康づくりを推進しています。

緑豊かな公園都市
緑豊かな公園都市
水野市長(向かって左)に記念品を手渡すベトナムフエ市のファン・バイ・ハイ氏
水野市長(向かって左)に記念品を手渡すベトナムフエ市のファン・バイ・ハイ氏

続いて尾張旭市学校給食センターを視察しました。当センターは2010年に開設されました。調理だけでなく、学校給食を通じて食の大切さを育むために食育事業を実施しています。学校給食に提供する食材の産地名を公表するなど、地産地消にも取り組んでいます。また、食物アレルギーの児童・生徒がアレルギーのない子ども達と同じ学校給食を食べられるように、おかずに食物の7大アレルギー(卵、乳、小麦、そば、落花生、かに、えび)を除去した給食を提供する日を設けてます。これまでのプラスティック製の食器から、人体への影響が最も少ない強化磁器製食器を使用しています。絵柄は、市内の小中学生から募集しているそうです。

視察団は最初に、食育指導室で調理プロセスと衛生管理のビデオを鑑賞しました。

尾張旭市学校給食センター
尾張旭市学校給食センター
管理栄養士からの説明
管理栄養士からの説明
視察団との質疑応答
視察団との質疑応答
2階見学通路から調理室を視察
2階見学通路から調理室を視察

今回の視察で最も印象に残った施設の一つが給食センターだったようです。フィリピンタガイタイ市の職員は、「ぜひこのシステムを導入するよう、市に働きかけたい」と感想を述べていました。

 

給食センターの後、実際に給食の現場を視察するために城山小学校を訪問しました。まず、校長の岡田先生から同校の概要と教育方針の説明がありました。

尾張旭市立城山小学校
尾張旭市立城山小学校
校長の岡田先生から教育方針の説明を受ける
校長の岡田先生から教育方針の説明を受ける

質疑応答の後は給食の試食です。視察団は2名ずつ5学年と6学年のクラスに割り当てられ、席に着きました。

 

配膳の光景は視察団に新鮮な驚きを与えたようです。給食当番が食缶や食器を教室に運び、真っ白な帽子、割烹着、マスクを着用。トレーを持って並ぶ児童に配膳します。食べ始めと食べ終わりで「いただきます」「ごちそうさま」の号令があり、食べ終わりの食器を食缶に戻します。食べ残しが少なくなるよう、最初に分量を調節する方法もユニークでした。小食の児童がご飯やおかずを食缶に戻した後、もっと食べたい児童たちがジャンケンで勝ち取るのです。

 

すべての作業が子どもたちだけで和気あいあいと進行する様子に、視察団は目を見張りました。

岡田先生によると、自分たちでの配膳は、責任感や自主性、相手を思いやる気持ちを育むものだそうです。

 

休み時間に廊下や玄関を掃除するのも同様の道徳観を身に着けさせるためなのでしょう。こうした教育方針を持たない国々から来た視察団は、感心することしきりでした。

配膳する給食当番の児童たち
配膳する給食当番の児童たち
この日のメニューは筑前煮、白身魚のフライ、大根サラダ、ご飯、牛乳、節分の豆
この日のメニューは筑前煮、白身魚のフライ、大根サラダ、ご飯、牛乳、節分の豆
児童たちと席を並べるシンガポールからの参加者
児童たちと席を並べるシンガポールからの参加者
みんなで記念撮影
みんなで記念撮影

続いて市のシンボルタワー「スカイワードあさひ」を訪問。尾張旭市食生活改善推進員の活動報告を受け、意見交換をしました。同市訪問の主旨が子どもたちの食生活改善だったので、テーマは幼児に対する食育の取組みとなり、特に保育園の食育巡回教室、保育園児の料理体験、未就園児親子の食育について説明いただきました。

冒頭、食育の歌を披露する食生活改善推進員の皆さん
冒頭、食育の歌を披露する食生活改善推進員の皆さん
食育紙芝居の展示
食育紙芝居の展示
尾張旭市食生活改善推進員の皆さんと記念撮影
尾張旭市食生活改善推進員の皆さんと記念撮影

千葉県柏市訪問

2月4日(木)、柏市役所にて秋山市長を表敬訪問しました。

柏市の人口は約41万人。千葉県の北西部、東京都心から約30㎞の距離に位置します。高い利便性から、JR柏駅周辺は商業の集積地として多くの若者や買い物客で賑わっています。また、つくばエクスプレス柏の葉地域では新産業の創出をはじめ、大学、研究所、産学連携施設などがあり、先進的な学術のまちとして注目されています。平成20年に中核市となり、保健所を設置しました。

 

「食」を通した健康づくり活動の推進は「柏市食育推進計画」を策定。「栄養・食生活」を重点分野の一つとして、産学官民が連携・協働し、「バランスのとれた食事を規則正しくとる」、「健康的な食習慣の定着」を目指した取り組みを進めています。

市の概要と健康都市の取組みを説明する秋山市長
市の概要と健康都市の取組みを説明する秋山市長
秋山市長との記念撮影
秋山市長との記念撮影

続いてアミュゼ柏に移動しました。同施設は文化施設とコミュニティ活動の拠点である柏中央近隣センターからなる複合施設です。

 

まず、柏市保健所地域健康づくり課の職員の方より、柏市健康増進計画と柏市民健康づくり推進員との協働について説明いただきました。同市によると、柏市健康増進計画では一番目に「栄養・食生活」が挙げられており、「適正体重を維持するための知識の普及」、「野菜の摂取量の増加」、「朝食を意識した,バランスのよい食生活の普及」を目標にそれぞれ指標を設けています。同市は10年後を目指してその目標値に近づけるため、市民や関係団体との協働を行っており、その一つが柏市民健康づくり推進員との地域活動です。

柏市保健所地域健康づくり課からの説明
柏市保健所地域健康づくり課からの説明

柏市民健康づくり推進員は、柏市内全域から推薦された方々です。市民が主体となった地域ぐるみの健康づくりを推進することを目的に、約350名が市内20地域で活動しています。「子育て支援」「健康づくり」「食育推進」の3部会制で、食に関しては「食育推進部会」が中心となっています。健康講座や調理実習(離乳食教室、わんぱく料理教室、男性料理教室等)や文化祭での健康啓発をはじめ啓発媒体の作成(「簡単♪野菜レシピ」等)で啓発活動を行っています。

市販されている飲料水に含まれる砂糖の量を指摘する推進員
市販されている飲料水に含まれる砂糖の量を指摘する推進員

今回は、そうした柏市民健康づくり推進員にお集まりいただき、ヘルシーメニューの調理研修と試食を行いました。メニューは茶巾ちらしずし、ぶりのてりやき、根菜たっぷり汁、あずきミルクゼリーです。

ぶりの照り焼きの調理方法を学ぶ
ぶりの照り焼きの調理方法を学ぶ
出汁の取り方を学ぶ
出汁の取り方を学ぶ

栄養表を見てわかりとおり、ヘルシーメニューでは一食分の塩分が2.9gと、かなり少なくなっています。厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」によると、目標値は、18歳以上の男性で8g未満、同女性で7グラム未満となっています。

一方、同労省によると、男性の平均摂取量は11.1グラム、女性は9.4グラムですので、塩分過多の状況にあるといえます。アジア諸国も同様で、日本ほど厳しい基準がないものの、塩分の取り過ぎは問題視されているといいます。

そこで注目されるのが日本の食文化が誇る出汁の活用です。出汁のうまみ成分を利かせば、味わいを落とすことなく減塩できるからです。アジア諸国にも、出汁の代わりとなる酸味や生姜など香味野菜や香辛料を使う食文化があるとのこと。ヘルシーメニューでもかつお出汁をたっぷり使っていました。今回の調理研修では、減塩の工夫について意識を共有することができました。

ヘルシーメニューの栄養表
ヘルシーメニューの栄養表
ヘルシーメニュー
ヘルシーメニュー
ヘルシーメニューの試食
ヘルシーメニューの試食
推進員の皆さんとの記念撮影
推進員の皆さんとの記念撮影
推進員より視察団に手作り雛がプレゼントされた
推進員より視察団に手作り雛がプレゼントされた

山崎製パン株式会社横浜第二工場を訪問

最終日となる2月5日(金)はまず、山崎製パン株式会社横浜第二工場を訪問しました。

視察団が驚いたのは、衛生管理の徹底ぶりでした。

生産ラインに入室する際には毛髪の落下を防ぐための帽子、ヘアネット、白衣を着用し、靴も履き替えねばなりません。さらに手洗い、アルコール消毒、粘着ローラー掛け、エアシャワーという行程を経てようやく入室を許されるのです。

説明によると、同社はAIB(American Institute of Baking)食品安全統合基準に則り、原材料の入庫から製品の出荷までの全工程において、安全性を確立しているとのこと。

作業方法と従業員規範では、全ての施設や設備、機械の清掃方法や頻度を「清掃計画表」と清掃方法を定めた「清掃手順書」を作成しています。従業員の一人ひとりが「なぜそうするのか」、理解を深めるようにするためです。

さらに専門スタッフや各製造課長が品質管理と食品衛生のチェックのため日々現場を巡回し、従業員に対して教育指導を行っています。

また、原材料の安全管理では、搬入段階での虫や小石等の異物混入をチェックしています。特に主原料である小麦粉では、保管庫から製造ラインに送るための送粉ラインに異物を除去するフィルターを設置し生地への異物混入を防止しています。

同社工場における食品安全衛生管理の徹底ぶりを身をもって体験した視察団。フィリピンやカンボジア、ベトナムに工場を進出していただきたいとの発言が相次ぎました。

工場の建物に入る前に手を入念に消毒
工場の建物に入る前に手を入念に消毒
説明会風景。全員が帽子や白衣に身を固めた。
説明会風景。全員が帽子や白衣に身を固めた。
本社や工場の皆さんとの記念撮影
本社や工場の皆さんとの記念撮影

川崎大師平間寺を訪問

午後は厄除けのお大師さま」として知られる、川崎大師平間寺を訪問し副住職と面会後、護摩祈祷を経験しました。

同寺によると、護摩は厳粛な秘法で、護摩壇の周囲に香華をはじめ五穀、お供物をそなえ、斎戒沐浴して心身を浄めた導師が、中央の炉の中に護摩木を焚いて、御本尊厄除弘法大師さまのご供養をすることに始まったとされています。

視察団は煩悩を焼き浄めるために合掌し、健康長寿や心願成就など、開運の祈願を行いました。

境内にて
境内にて
副住職による仏教と食の講話
副住職による仏教と食の講話
護摩祈祷
護摩祈祷

イトーキ東京イノベーションセンターSYNQA訪問

最後の訪問先はイトーキ東京イノベーションセンターSYNQAです。

ここはオフィス家具メーカーとして知られる株式会社イトーキが、社内にとどまらずさまざまな組織と多様な知の交流を促すために創り出したスペースです。健康オフィスとして注目されているのが、3階の執務スペース「SYNQA office」です。

ここでは「Workcise」という概念のもと、オフィスワーカーが日常の動きのなかで健康を増進し、かつ気分転換によって作業効率の向上を図る工夫を取り入れています。具体的には、回遊動線を設けて歩き回る動きを誘導したり、身長ごとに適切な歩幅を描いた一画を設け、正しい歩き方を意識できるようにしていること等です。また、スタンディングデスクにより健康増進を図ったり、座りながら身体を動かせる椅子も置いています。社員が健康になれば医療費が減るのはもちろんのこと、経営にもメリットをもらたすという健康経営の面も追及しているそうです。

視察団は健康オフィスを見て回り、歩幅をチェックする等、オフィスでの健康増進の工夫に感心していました。

修了式と交流会

健康オフィス見学後、SYNQA1階ネットワーキングカフェにて修了式と交流会が行われました。

オープニングとして、株式会社オリジンが展開するターニングポイントというトレーニングジムの成果が発表されました。糖質制限ダイエットとエクササイズにより、短期間で健康的にスリムになれることから、今最も注目されているジムの一つです。

ターニングポイントの発表風景
ターニングポイントの発表風景
ターニングポイントの発表
ターニングポイントの発表

修了式では、千葉理事長より一人ひとりに修了証と記念品が手渡されました。各自が今回の国際交流プログラムの感想を述べ、全行程が終了しました。

修了証を手にした視察団
修了証を手にした視察団

その他の思い出アルバム



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