長岡市と味の素が「ロコモ予防」でイベント共催

新潟県長岡市では、民間の力を積極的に活用した健康づくりを始めています。今回は、味の素㈱と共催で、ロコモ予防を柱とした「生涯現役サポート健康セミナー」を開催。好評だった講演、そして併設の参加型ミニイベントの様子をレポートします。

「生涯現役」社会づくりに向けて連携

 

長岡市と味の素㈱が健康寿命の延伸に向けて共催したイベントが、9月9日午後同市で開かれました。

 長岡市では、「多世代健康まちづくり事業」が2014年から始まっています。子どもからお年寄りまで多世代にわたる市民が、健康の3要素「食」「運動」「休養」を良質でバランス良く実践し、楽しみながら継続できるよう、民間事業者が持つノウハウを活用しながら進めているものです。

 一方、味の素㈱は、2012年「アクティブシニアプロジェクト」を起ちあげています。「質の良い食と栄養」によって健康寿命の延伸に貢献するため、ロコモティブシンドローム(運動器症候群、以下「ロコモ」)の予防に向けて、タンパク質・アミノ酸の健康価値について幅広く普及啓発活動を行ってきました。

会場となった市民交流ホールやアリーナ、市役所を擁するアオーレ長岡
会場となった市民交流ホールやアリーナ、市役所を擁するアオーレ長岡

その両者の思いが、今回「生涯現役サポート健康セミナー」共催として実を結びました。テーマは「毎日の食事でロコモ予防 ~あなたは、あなたの食べたものでできている~」。

 

 会場となったアオーレ長岡の市民交流ホールは、市の食生活改善推進委員(※)はじめ、たくさんの市民で埋まりました。市によれば申し込み受付を始めると、またたく間に200名の定員に達したとのこと。長岡市民の関心の高さがうかがえます。

(※)食生活改善推進委員=食生活の基礎知識を身につけ、地域で食や健康に関する活動を広めるボランティア。

「ロコモは気づかぬうちに……。

でも対策はあります!」

 

主催者を代表して味の素㈱新潟営業所の天沼孝行所長から、「健康でいきいきとした毎日の生活に少しでもお役に立てれば」との開会の挨拶。

 続いて登壇した講師は菅野由美子氏。同社東京支社営業企画グループ 広報・普及チームの主任として、各地で普及啓発活動を行う人気講師です。

 講演のサブタイトルは、「あなたは、あなたの食べたものでできている」。「今日のあなたの食事」が「明日の」そして「未来のあなたの素」になる。とすれば、「何を食べるのか?」ではなく、「何のために食べるのか?」と目的をもった食事が大切、と菅野講師。では、「生涯現役」という目的のために、どう食べればよいのか。講演は、そんな問いかけから始まりました。

 「生涯現役」をめざすには、介護を受けたり寝たきりにならずに暮らせる「健康寿命」を延ばすことが大切です。「そのためにはメタボ対策だけでなく、ロコモの対策が欠かせません。ロコモとは、歳とともに足腰が弱くなり、日常の生活に困る状態をいいますが、健康寿命の延伸を阻む要因の3割以上がロコモのリスクと関係があるといわれています」、このようにロコモへの注意を促します。

 「では、ここで皆さんのロコモ度をチェックしてみましょう!」。菅野講師は7つの質問を投げかけます。続いて、片足立ち上がりのテスト。チャレンジする会場からは、笑い声やため息が……。

 

「ロコモは気づかないうちに、徐々に進行します。早いうちに気づくことが大切」と菅野講師。「でも、今からでもロコモの対策は可能です。筋力は衰えるのが早いけれど、80歳になってもよみがえります」。筋力をアップさせれば、ロコモのさまざまなリスクを軽減できるというのです。

講師の質問で参加者はロコモ度チェック
講師の質問で参加者はロコモ度チェック
片足立ち上がりのテストを実際に行い、自分の筋力を実感
片足立ち上がりのテストを実際に行い、自分の筋力を実感

「ロコモ対策は『運動』と『栄養』のどちらも大切」

 

では、筋肉をつくるにはどうすればよいのか。「材料」と、それをつくる「指令」が出れば、筋タンパク質がつくられます。「材料」とは必須アミノ酸。一方、「作りなさい!」と信号を出すのは、運動と必須アミノ酸ロイシンです。つまり、筋力アップには「運動と栄養」のどちらも大切、と菅野講師は解説します。

 

(1) そこでロコモ対策、まずは「運動編」です。

 菅野講師は、「筋タンパク質をつくる『指令』は運動をすることで高まります。毎日運動をつづけましょう」と、日常生活で続けられる運動を具体的に紹介します。姿勢を良くして、姿勢筋を鍛えれば、ロコモ予防につながります。ここで、全員のロコモ体操の始まりです。整形外科医・医学博士の中村格子先生作成の「美姿勢ロコモ体操」の一部実演です。タオルを両手で持ち肩幅にキープして上げ、右へ、左へ。そして、体操を習慣化するコツも紹介されました。

(2) 続いて、ロコモ対策の「栄養編」。

 

 「タンパク質は生命活動に欠かせない必須の栄養素です。ところが近年、全世代でタンパク質摂取量が減っています。さらに、歳をとると筋タンパク質の合成力が低下します。同じ量の食事を摂っても、高齢者は若いときほど筋肉がつくられません。摂取量を増やすとともに、質にも注意が必要です」、こう菅野講師は指摘します。

 運動編で触れたように、筋タンパク質を合成するには、「材料」(必須アミノ酸)と、「筋タンパク質をつくりなさい」という「指令」が必要ですが、このシグナルは、運動と、必須アミノ酸の一種であるロイシンによって生まれます。したがって、タンパク質の素となるアミノ酸、中でも体の中で合成できないので食事から必ず摂らなければならない必須アミノ酸が体にとってとても重要なことが明らかにされました。

 こうしたことから、筋肉の衰えを予防する栄養補給として生まれたのが、筋タンパク質合成のシグナルを出すロイシンを高配合した必須アミノ酸混合物「Amino L40」です。効率よく高齢者の筋タンパク質合成を促進する栄養成分で、その有用性は国内外の学会で評価されています。「Amino L40」を使った筋量改善のデータ例も、菅野講師によって紹介されました。

(3) さらに、ロコモ対策の「食事編」です。

 では、実際の食事はどうすればよいのでしょう。「これまでの話からわかるように、必須アミノ酸の多いタンパク質を効率よく摂ることがポイント」と説明する菅野講師は、必須アミノ酸(ロイシン)の多い食材を紹介。朝・昼・夕のそれぞれに、きちんと摂ることの大切さを強調します。参加者に配布されたメニューブック「らくらくバランス食生活」や、レシピサイト「からだごはんラボ」も紹介され、食事にあたっての具体的なヒントが豊富に示されました。

 講演の最後は、「おいしく食べて毎日を楽しんで、健康によりよく生きる――私どもとしてはそんなお手伝いができれば幸いです」との言葉で締めくくられました。ロコモ予防の「運動と栄養」のコツがわかりやすく解説された講演内容でした。

 終了後、参加者に感想をうかがうと、「ロコモ予防がなぜ大事なのか、納得」、「ロコモの予防についてはある程度知っているつもりでしたが、筋肉をつくるタンパク質、アミノ酸、そしてロイシンの話が初めて聞け、有意義でした」などの声が寄せられました。

 なお、講演で紹介されたロコモ予防メニューは、県内の流通との連携により、地元スーパーの店頭でも紹介されました。

ミニイベントでは自分のロコモ度を測定

 

一方、講演と平行して、講演会場近くにある「ながおか市民センター」では、ミニイベント「ロコモ度テスト・ロコモ予防運動講座」が午前から夕方まで開かれ、こちらも賑わいました。

 「ロコモ度テスト」は公益社団法人 日本整形外科学会が策定したもので、下肢筋力を測る「立ち上がりテスト」、歩行能力を総合評価する「2ステップテスト」などがあり、実際に体を動かして、ロコモ度をチェックします。

ロコモ度テストにも多くの市民が参加
ロコモ度テストにも多くの市民が参加
片足での「立ち上がりテスト」
片足での「立ち上がりテスト」


歩幅を測定する「2ステップテスト」

ロコモ予防運動講座
ロコモ予防運動講座

参加された方に感想をうかがってみました。「40センチの台からの片足立ち上がりはできてほっとしたけれど、ステップテストの結果は『ロコモ予備軍注意ゾーン』に該当してびっくり。自覚していなかったので、警告と受けとめて、ロコモにならないようにアクションを起こします」(60代後半男性)。「このテストはふだんやっていない動きばかり。片足立ち上がりは30センチの台でもできましたが、毎日の生活でもロコモ度を意識したいですね」(50代後半女性)。

 また隣接する一角での「ロコモ予防運動」講座は、地域の運動指導士のインストラクションで、片足立ちやスクワットを行いました。笑いも生まれる楽しいレッスンに汗をかきながら、「これなら続けられそう」と参加者の声。

長岡市福祉保健部福祉総務課の星雅人課長
長岡市福祉保健部福祉総務課の星雅人課長

「『楽しみながら継続』に民間の力を」

 

 イベント終了後、長岡市にお話をうかがってみました。

「今回は申し込み受付後間もなく定員となるほど、たいへん盛況でした。お断りせざるをえない方もたくさんいらしたので、ぜひ次回も開催したいですね。講演は、講師のお話が素晴らしかったので、参加者の反応がとてもよかったです。皆さん、大きくうなずいていました。男性の参加もふだんより目立ちました」。こう語るのは、長岡市福祉保健部福祉総務課の星雅人課長です。「市は昨年『多世代健康まちづくり事業』をスタートさせました。『楽しみながら継続』ということが大事ですが、そのスタイルは民間企業さんがお得意ですから、民間の団体と連携して推進するのがこの事業の特長です。さまざまな企業とオープンに連携して、健康寿命の延伸を図りたい。そして元気な高齢者には、その力で地域に貢献していただく。地域活動に参加すれば、仲間が増えます。そうした好循環を、この事業を始めてから強く実感しています」と語る星課長。今回のイベントにも手応えを大いに感じている様子でした。

 また、福祉保健部健康課健康づくり係の茨木奈美係長も、「今回は、参加申し込み開始時から市民の期待感の高さを感じました。味の素㈱さんとの共催ということで、新鮮さを感じたようです。皆さん、講演を熱心に聞かれ、終了後にロイシン関連の資料を求める方もいたほどです」とのことでした。

 一方、味の素㈱も、「今回の催しでは、ロコモ予防について、運動・栄養の両面からお話しさせていただきましたが、市民の皆様の関心がとても高いことを実感しました。また、ロコモ度テストや予防運動講座など参加型のミニイベントも好評をいただき、長岡市が期待される『楽しみながら継続』という点でもそれなりにご要望に添えたのでは、と思っております。社会的課題となっている健康寿命の延伸に向けて、これまで弊社が培ってきたタンパク質・アミノ酸等の研究成果を生かし、地域の健康づくりにお役立ちできれば、これに勝る喜びはありません。これからも各自治体のニーズに合うかたちでセミナーやイベントなどさまざまにお手伝いを、と考えております」(味の素㈱アミノサイエンス事業本部ウェルネス事業部企画グループの重宗之雄グループ長)と、これからの取組に一層の意欲を示していました。

 また、今回の催しを市とともに具体的に進めてきた味の素㈱新潟営業所の天沼孝行所長はこう語ります。「新潟県内でも、とくに長岡市は『健康なまちづくり』に先進的に取り組んでいらっしゃいます。市民の皆様の意識の高さも改めて感じました。子どもから高齢者まで『多世代が元気に暮らせるまちづくり』を積極的に進める長岡市のお手伝いを今回このようにでき、たいへんうれしく思っています。私どもは地域に寄り沿い、これらからもさまざまな形で地域社会のお役に立てるよう努めてまいります」。

 ロコモ予防、健康寿命の延伸、健康なまちづくりという社会的課題に率先して取り組む長岡市民と行政、そして味の素㈱の熱意と意気込みが伝わってくるイベントで、夕暮れの長岡駅舎上には鮮やかな虹が架かっていました