第3回定例懇話会

平成28年5月16日、東京京橋のイトーキ東京イノベーションセンター「SYNQA」にて、第3回定例懇話会が120名の参加者のもと開催されました。会員や理事の皆様をはじめ、健康都市活動に携わる行政の方々やボランティアの方々が一堂に会し、交流を広めていただくことが目的です。


今回の記念講話では尾身茂氏(JCHO:独立行政法人地域医療機能推進機構理事長)をお招きし、「これからの健康都市と社会の仕組みづくり」についてお話しいただきました。自治体による事例紹介では愛知県高浜市生涯現役まちづくりグループリーダー磯村和志氏より「生涯現役のまちづくり」について報告いただき、最後に平成27年度NGO健康都市活動支援機構の活動報告を行いました。

挨拶する千葉理事長
挨拶する千葉理事長

我が国の医療の課題

尾身氏は、「我が国の医療の課題」のテーマで、医師の地域偏在を是正する方策について言及しました。医療は複雑系であるとした上で、解決には「急所を押えること」が必要と強調します。急所として挙げたのが保険診療の制度です。医師の育成には多額の税金が投じられていることから、その公共性は高くなっています。一方で職業選択の自由が法律で認められているため、医師の地理的偏在が生じています。特に地方は深刻な医師不足に悩まされています。

尾身茂氏
尾身茂氏

そこで尾身氏が代表理事を務めるNPO全世代で計画しているのが保険診療の制度の活用です。保険医になるために、インターン後1~2年間は医師が足りない地域での医療に従事しなければならないという条件を課すのです。「医師の殆どが保険医なので、従わざるを得ないとのでしょう」と尾身氏。2年間で16,000人の医師を地方に派遣できるようになるそうです。「医療保険は保険者との契約なので、法律上問題ありません。」

 

NPO全世代は2015年に発足された団体です。日本の将来を政治家や役所に任せるだけでなく、主権者として未来をつくるために老若男女が一堂に会する「参加型市井会議」を開き、政策提言を行うとしています。2016年の事業テーマは「医師の地域偏在を是正する方策」をはじめ、「病院内保育所の地域開放」、「セカンドチャンス人材バンクの創設」です。

全世代の3つのテーマについて説明する尾身氏
全世代の3つのテーマについて説明する尾身氏

「病院内保育所の地域開放」では、医療機関の資源で育児世代を支援するため、「病院保育」の基盤整備を行います。全国に2,761か所ある病院内の保育所はこれまで、職員の児童向けが殆どでしたが、これを地域の一般家庭児童らにも開放できるよう、医療界や行政、社会に幅広く働きかけていきます。

 

「セカンドチャンス人材バンクの創設」では、若者とシニア層や経験者、有識者の交流プラットフォームづくりを行います。若い人たちの「志」と先輩たちの「豊かな人脈や経験値」より全世代が協同するきっかけづくりを支援し、就業機会を増やすことが目的です。

 

最後に尾身氏は、これからの社会の仕組みづくりのために、全世代への積極的な参画を呼びかけました。

高浜市「生涯現役のまちづくり」

「生涯現役のまちづくり」を掲げる高浜市の人口やおよそ47,000 人。2013 年度から「健康自生地」を開始しました。外出による適度な運動、地域住民との交流を目的とした「居場所(地域資源の利活用)づくり」の取り組みです。集いの場となるのが、地元の商店や飲食店、公共施設、神社などの既存施設。そうした場の運営を高齢者や商店主らが自主的に行っていることが特徴で、参加者から利用料を徴収(受益者負担)しています。

磯村和志氏
磯村和志氏

地元の商店も積極的に参画しており、店内の一角に机と椅子が設けるなど、自由におしゃべりできる環境づくりを行っています。お茶、お菓子などのサービスもあり、必ずしも買い物をする必要はないとのこと。商店にとっては新たな来店者が増え、活気が生まれ、売り上げもアップするメリットがあります。「『地域住民への居場所の提供』というスタイルの『社会貢献』が定着しましたと」磯村氏。

健康自生地のカフェ
健康自生地のカフェ
カフェの落ち着いた空間 夫婦で切り盛りしている。
カフェの落ち着いた空間 夫婦で切り盛りしている。

行政の役割は情報発信とインセンティブで、情報誌「まいにちでかける でいでーる」を3か月に1度、広報紙と一緒に配布する他、専用ホームページ「たかはま元気de(で)ねっと」で最新情報を掲載しています。抽選で賞品が当たるスタンプラリーも行っています。行政や企業、地元商店からの協賛品もあることから健康自生地は増え続け、2016 年2 月時点で82 件に上っています。

 

2015年度からは新たな取組みとして、各健康自生地における活動へ参加することによる効果測定の実施を、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)、花王(株)、パーソナルヘルスケア研究所、富士通(株)、未来医療開発センターとともに行っています。60歳以上の市民(およそ4000人)に対して活動量計を配布すると同時に、すべての健康自生地にSIMフリータブレットを設置。これは花王の「ホコタッチ」と呼ばれるシステムで、専用歩行計のソフトウェアは、歩数だけでなく、日常の歩行速度を正確に計測することが可能です。

 

利用者は歩行計を身に着けて、最低でも月に1 度「ホコタッチスポット」に出向き、読み取り器にかざします。すると歩行計内のデータが読みだされて、本人の最近の歩行結果や総合評価が自動で印刷される仕組みです。行政では、こうしたデータから、介護予防や認知症予防に効果的な健康自生地における活動を分析しています。

カフェのホコタッチ
カフェのホコタッチ

最後にNGO健康都市活動支援機構の活動報告では、健康都市めぐりin嬉野市と国際交流事業について発表しました。

 

セミナーに続いて「清水唯史ストリングス」による弦楽四重奏のミニコンサートを開催し、カルテットの音色をBGMに懇親会を催しました。演奏曲はモーツァルト作曲アイネクライネナハトムジーク1楽章とドボルザーク作曲弦楽四重奏曲アメリカ1楽章4楽章。心地よい調べとワインに軽く酔いながら交流を楽しみました。

「清水唯史ストリングス」による弦楽四重奏のミニコンサート
「清水唯史ストリングス」による弦楽四重奏のミニコンサート
弦楽四重奏の音色に聞き入る参加者
弦楽四重奏の音色に聞き入る参加者