輝くヘルシーパートナーズ 丹下誠司さん

丹下さん
丹下さん

 本コラムでは、ボランティア活動等を通して社会貢献と自己実現を果たしている個人に登場いただいている。今回は、企業に身を置きながら数々の社会貢献事業に携わる丹下誠司さん(大成建設株式会社環境本部勤務)に寄稿いただいた。

主旨

 私は海外勤務が長く、通算では駐在が10年、出張で8年ほどの行き来があります。現場はインドやインドネシア、マレーシアで、2つの水力発電所、天然ガスプラント、国際飛行場、動物園舎を担当しました。最近では、世界の共通テーマとしてSDGsが謳われるようになり、貧困や飢餓の問題に光が当たるようになりました。私は海外の貧困エリアでも仕事をしてきており、とても良い傾向だと思っています。本稿では、国内外での経験をSDGsと照し合せながらいくつかの事例について報告し、思いを綴りました。読者の皆さんにもSDGsの達成に向けた意識を共有いただければ幸いです。

東日本大震災での被災地支援

岩﨑さん
岩﨑さん

 宝来館は、岩手県釜石市の海岸沿いに建つ鉄筋コンクリート4階建ての旅館で、震災前から当社職員が定宿にしていました。ところが、18メートルの大津波により2階の床まで浸水してしまったのです。女将の岩﨑昭子さんから依頼を受けた当社は社員ボランティアを派遣し、津波の避難道の新設をお手伝いしました。スコップで山道を切り拓く力仕事で、多くの女将さんファンのボランティアにも合流いただきました。そして、釜石地方森林組合の協力や助成金により車椅子でも避難できる木造作の避難道を敷設したのです。近くには、当社が施工した鵜住居復興ラグビー場があり、今年はワールドカップでの2試合が予定されています。山頂には復興ラグビー場を見守るかのように八幡様が2体祀られており、その参拝道も現在敷設中です。

津波の避難道
津波の避難道

東日本大震災での被災企業支援

希望の缶詰
希望の缶詰

 同震災では多くの企業からボランティアが派遣され、一般ボランティアと共に活動しました。私も東北新幹線の再開後、5月1日に初めて石巻市に入りました。三陸地方の惨状に愕然としつつ組織人としてできることを探し、石巻専修大学を拠点に活動していた石巻災害復興支援協議会の活動に参加しました。ここで遭遇したのが株式会社木の屋石巻水産製の被災した缶詰です。同社の倉庫が津波に呑まれた際、ピースボート災害ボランティアセンター(PVC)のボランティアが瓦礫の中から掘り出したもので、「希望の缶詰」と呼ばれていました。食べてみると、何の問題もなく美味しい。販売応援を申入れ、2011年12月に東京交通会舘での芙蓉ファミリーフェアの場を借りて、3缶を千円で販売しました。来場者の中には、少しでも東北の復興に繋がればと、涙ながらに買い求めた方もおられました。フェア事務局が来場者記念品として採用したこともあり、計2000缶を売切り、売上全額を木の屋石巻水産に送ることができました。

ボルネオ象のレスキューセンター建設

 東日本大震災の約2ヶ月後、当社の副社長より、旭山動物園の「夢の動物園」構想を手伝うように依頼されました。ボルネオ象の保護で考案されたプロジェクトです。場所はマレーシア・サバ州サンダカンの100km奥です。この上司には10年ほど前にもインド西ベンガル州カルカッタの400km奥のダム建設を指示されたことがあり、その時の経験を生かすことができました。以来、8年越しで関わっており、同センターは今も2頭のボルネオ象のレスキューセンターとして機能しています。今年は小象4頭の収容施設の計画があります。このセンターで保護された象が、いつかは日本の動物園で子どもたちを楽しませる日を夢みています。

自販機募金

 石巻でNPOのピースボート災害ボランティアセンター(PVC)と繋がりができました。非営利団体の課題はなんと言っても活動資金です。少しでも応援できたらの思いで目を付けたのが、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社の協力による自動販売機を通じた募金システムです。通常、自販機運営会社は設置主に手数料(ロケーションフィー)を支払い、設置主はここから電気代を捻出し、残りを利益としています。私は残りを(月平均300本を販売)をPVCへの直接寄付と、釜石地方森林組合の森林排出権の購入(一般社団法人フォレストック協会の排出権を購入)に割当て、さらに残りで温州ミカンを岩手県の小学校の給食用に贈るようにしています。24時間稼働する自販機からの不労所得からのお裾分けですが、こうした寄付も、広義のボランティアに繋がるかと思っています。

まずは自分事として始める

 ボランティアは、個人、民間、行政の連携プレーだと思います。多くの関係者が集まり、掛け算を行うと大きな力を生み出すことができます。SDGsという高尚な理論も、個人のボランティア活動に落とし込むと、17の目標それぞれに身近な近似点が見えてきます。石巻で掘り出された缶詰を復興への想いで購入することも、SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に繋がるのです。SDGsの理念である「誰一人も取り残さない」ことはそう簡単なことではありませんが、「隗(かい)から始めよ」で、まずは自分事としてできるところから取組む、最初の一歩はそういうところからで良いのではないでしょうか。私も、昭和で30年間、平成で30年間、さらに新しい元号の下で数十年間、社会への恩返しを自分事として続けられるように、今後も工夫を重ねていきたいと思います。