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「松戸白宇宙かぼちゃ」でまちおこし

 千葉県松戸市でのヘルシーパートナーズ事業は、地産地消のシンボルとして親しまれている「松戸白宇宙かぼちゃ」を素材に、食と運動と社会参画をテーマに活動を行っている。本号では小学生による栽培を中心に、かぼちゃで地域おこしに勤しむ人々を取材した。

宇宙を旅したかぼちゃの種

山崎直子さん(中央)
山崎直子さん(中央)

 松戸市観光協会によると、このかぼちゃは53年前に旧千葉大園芸学部と松戸市樋野口地区の故・高橋作次郎氏とが開発した和カボチャとされる。長年つくば市の農業生産資源ジーンバンクに保存されていたのが日本園芸生産研究所で復活栽培された。2010年4月、松戸市出身の宇宙飛行士、山崎直子さんがスペースシャトル・ディスカバリー号に230粒の種を携え宇宙に行き、15日後に帰還した。同研究所は、その種子で実った「松戸白かぼちゃ」から種子を採取し、現在も保存管理を行っている。

松戸白宇宙かぼちゃの種
松戸白宇宙かぼちゃの種

松戸白宇宙かぼちゃの会

育てた苗を農家に引き渡す松戸市立中部小学校の児童たち
育てた苗を農家に引き渡す松戸市立中部小学校の児童たち

 松戸市は宇宙を旅したかぼちゃを「松戸白宇宙かぼちゃ」と名づけ、松戸市の特産品として地域振興の一助とするために有志に栽培や商品化の協力を依頼。2011年5月、林護さんを会長に松戸白宇宙かぼちゃの会が発足した。

 

 本会は発足時から、市立中部小学校の協力で児童による「松戸白宇宙かぼちゃ栽培委員会」を組織し、一部種の植付や苗の栽培を委託。協力農家で定植栽培し、収穫した実を学校給食で用いたり、一般公募の「松戸白宇宙かぼちゃレシピコンテスト」を開催するなど、食育に力を注いできた。商品化としては、山崎製パン株式会社の「ランチパック」やメリーチョコレートカムパニーのプチケーキをはじめとするパンや菓子、惣菜として採用されるなど、松戸の名産として好評を博している。

栽培と花育

 2018年、松戸市ヘルシーパートナーズ事業を推進するにあたり、食育と地域振興のシンボルである「松戸白宇宙かぼちゃ」を題材にすることで同意。現在、一般社団法人松戸白宇宙かぼちゃの会、同市健康福祉部健康推進課と経済振興部文化観光国際課、食生活改善推進員をはじめとする健康ボランティア団体との連携により、市民の健康づくりに取組んでいる。

 

 

 栽培では、小学校を5校(中部小学校、南部小学校、矢切小学校、古ケ崎小学校、相模台小学校)に拡大して協力を依頼。栽培委員会を中心に児童約180人による種蒔きと苗の育成を行った。育てた苗は前年同様契約農家に引き渡し、学校毎に区画された畑で定植。9月に収穫した実は学校給食のほか、食生活改善推進員と山崎製パン株式会社の協力によるスイーツの開発に使われる。

種を植える南部小学校の児童たち
種を植える南部小学校の児童たち
矢切小学校用の畑
矢切小学校用の畑
種を植える矢切小学校の児童たち
種を植える矢切小学校の児童たち
松戸白宇宙かぼちゃの花
松戸白宇宙かぼちゃの花
定植する矢切小学校の児童たち
定植する矢切小学校の児童たち
松戸白宇宙かぼちゃの実
松戸白宇宙かぼちゃの実


 食育とともに実施したのが花育だ。矢切小学校4年生の特別授業では、花育の目的でかぼちゃの栽培体験を取りあげ、自然との関わりや生命あるものへのやさしい気持ちをについて考えた。さらに「苔玉づくり」(観葉植物の水耕栽培)を実習し、感性や情操面でのさらなる向上をめざした。

 

 同事業では本年度引き続き、園児や小学生を対象にした「絵手紙コンテスト」を主催するほか、市が主催するウォーキング大会と協働していく。

講師の石戸明一氏
講師の石戸明一氏
花育の授業
花育の授業
苔玉づくりに取組む
苔玉づくりに取組む

関係者インタビュー(一般社団法人松戸白宇宙かぼちゃの会)

会長 林護さん(78)

 林さんは元NHKの音楽ディレクターとして紅白歌合戦やNHKのど自慢等、数々の名番組を手掛けた経歴をもつ。退職後はライオンズクラブに所属。カンボジアに16の小中学校を寄贈したことをはじめとする国際奉仕活動に取組み、関東ガバナー協議会議長に選ばれた。現在は松戸駅周辺活性化推進協議会会長等の役職を兼任し、多忙な毎日を過ごしている。

 

◎同会を発足したきっかけは?

 松戸市から『市の特産品として地域の発展に役立てて欲しい』と依頼されたためです。地域貢献のためならばと、松戸駅周辺活性化に携わる有志50数名に声掛けし、2011年に会を発足しました。

理事 古井晴男さん( 68 )

 

 古井さんは会社員時代、工業デザイナーとして家具や電気製品の外装を担当。今もフリーで注文に応じている。

 

◎入会したきっかけと現在の心境は?

 友人で会の設立メンバーでもある松戸市会議員の方から、第一回レシピコンテストの企画で相談を受けたことです。オブザーバーとして会の方向性や事業プランの作成に携わりながらコンテストを成功させ、内外の高評価をいただくことができました。翌年、理事として参加を要請され現在に至っています。

ストーリーがはっきりしているのが松戸白宇宙かぼちゃの特長です。この素材に出会い、育てていくことに生きがいを覚えています。市と研究所が種をしっかり管理していることから、ブランドとして育つ可能性は大いにあります。

栽培から、加工販売までの事業を市内の農家や小・中学校、企業・小売り店舗などを巻き込みながら大きなムーブメントとして確立していくのが目標です。今年は、ヘルシーパートナーズ事業のご協力をいただき、一歩まえに進める事が出来ました。

 

◎プロモーションと商品化についてお聞かせください。

 流通しているかぼちゃの95%以上が洋かぼちゃであることから、和かぼちゃである「松戸白宇宙かぼちゃ」を一般消費者に訴求することが重要です。私たちは成分分析により特性をはっきりさせ、それをプロモーションのポイントとしています。商品化には、主力商品として企業に開発いただくことで世の中に訴求する方法が有効です。今後は、契約農家を増やし生産量を確保することと、大手食品企業や流通企業の要望に応えられる品質と生産量を確保していきます。

 



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