フィリピン・マリキナ市健康都市国際フォーラム&理事会

マリキナ市コンベンションセンター
マリキナ市コンベンションセンター

2015年8月20日~23日、フィリピンのマリキナ市で健康都市国際フォーラムが開催されました。会場は市内のコンベンションセンターで、健康都市連合に所属する地元都市の市長や職員、WHO西太平洋アジア地域事務局をはじめ、韓国、オーストラリア、シンガポールから市長や代表者が、日本からは神奈川県大和市、NGO健康都市活動支援機構が参加しました。

健康都市国際フォーラム

テーマは「健康都市で非感染症を予防する」で、フィリピン政府と自治体115名の市長や幹部職員、海外からの使節団が参加するなかで、基調講演や事例報告、行政視察が行われました。

オープニングはマリキナ市コーラスグループによる国歌斉唱や健康都市連合のテーマソングで華やかに始まりました。

冒頭、マリキナ市のガズマン市長が挨拶立ち、「健康都市はフィリピンのような発展途上国にとって手に負えそうもない課題だが、マリキナ市にとっては生活様式になっている」とし、「都市マネジメントでの使命として健康都市の概念を養う覚悟がある」と意欲を表明しました。

マリキナ市のコーラスグループ
マリキナ市のコーラスグループ
会場風景
会場風景
ガズマン市長
ガズマン市長

副市長の挨拶の後、フィリピン首都圏地域保健省の健康づくりについての基調講演があり、セッションでは、WHO西太平洋アジア地域事務局のハイリム・シン博士が生活習慣病予防について講演。続いてオーストラリアのイラワラ市とシンガポールの代表者が自国での健康都市活動について報告しました。日本からは、健康都市連合の中村事務局長が健康都市連合の活動について報告を行い、当機構からは千葉理事長がフィリピン支部発足へのエールを込めてスピーチを行いました。

午後のセッションでは、マリキナ市と、同じくフィリピンの健康都市連合に加盟するサン・フェルナンド市の発表があり、最後にマニラ都市圏を中心とする12市の代表が壇上に上がり、健康都市連合フィリピン支部発足の結団式を行いました。

カディス副市長
カディス副市長
基調講演を行うフィリピン首都圏地域保健省
基調講演を行うフィリピン首都圏地域保健省
ハイリム・シン博士
ハイリム・シン博士
事例報告を行うオーストラリア・イラワラからの参加者
事例報告を行うオーストラリア・イラワラからの参加者
事例報告を行うシンガポールからの参加者
事例報告を行うシンガポールからの参加者
健康都市連合中村事務局長からの報告
健康都市連合中村事務局長からの報告
千葉理事長からのエールを込めたスピーチ
千葉理事長からのエールを込めたスピーチ

同国では、フィリピン首都圏地域保健省(Department of Health – National Capital Regional Office)と自治体が先導し、健康都市の推進をはじめ感染症や非感染症対策、災害対策に取り組み、財政や物流援助等を行っています。同省は健康都市が社会の健全な発展の原動力になるとの認識から地方自治体とパートナーシップを組み、保健衛生をはじめさまざまな部門のガバナンス能力の向上やリーダーの育成を果たしてきました。結果、政府のさまざまなレベルで都市化がもたらす健康の社会的要因や健康不平等の課題に取り組む体制が整いつつあります。

 

今回の国際フォーラムではフィリピン健康都市連合の結団式が執り行われました。同省とマニラ都市圏健康局、大会に参加した健康都市連合加盟自治体(マリキナ、カローカン, ダグバン、ラスピナス、マカティ、マンテンルパ、プラナク、パシグ、サン・フェルナンド、ラ・ユニオン、サンティアゴ、イサベラ、タガイタイ、バレンシア、ブキッドノン)の市長や職員が壇上に上がり、健康都市連合フィリピン支部憲章のもと発足を誓約。今後、WHO西太平洋地域事務局の支援を受けて健康都市活動が活発化することが期待されます。

健康都市連合フィリピン支部発足の結団式
健康都市連合フィリピン支部発足の結団式

行政視察

二日目は視察ツアーが行われました。

車で移動中、改めて気がついたのは、路上にゴミが落ちていなくて清潔なこと。実は、マリキナ市はゴミのポイ捨て禁止条例があるため、マニラ首都圏で最も清潔な街として知られているのです。違反者には、罰金500ペソが課されるそうです。

ゴミが落ちていない道路とジプニー(乗合バス)
ゴミが落ちていない道路とジプニー(乗合バス)

最初の訪問先はマリキナスポーツセンターです。

フィリピンでは数少ない国際大会の基準を満たす施設で、1995年に竣工しました。15,000人収容のメインスタジアムを中心にプール、ジム、バスケットコート、テニスコート、バドミントンコート、卓球場などを備えています。早朝から夜中まで安価に利用できるので、健康志向の市民が大勢利用しています。

メインスタジアムとトラック
メインスタジアムとトラック
プール
プール
卓球場
卓球場

マリキナスポーツセンターでは、マリキナ市自転車局により、自転車のまちづくりを報告するパネル展示コーナーが設けられていました。

慢性的な交通渋滞に悩むマニラ都市圏にとって、自転車は環境に優しく健康にいいのはもちろんのこと、有効な交通手段として見直されているのです。現在、77キロメートルの自転車専用路が整備され、市ではさまざまなキャンペーンで市民の利用を促しています。

ただ、53万人強の人口に対して、自転車の台数が約7,500台と極端に少ないのも事実。国際支援など何らかの援助が必要な分野かもしれません。

自転車のまちづくりをサイクリスト姿でプロモーションするカディス副市長
自転車のまちづくりをサイクリスト姿でプロモーションするカディス副市長
マリキナ市の自転車ロードマップ。緑の線が自転車専用路を備えた道路
マリキナ市の自転車ロードマップ。緑の線が自転車専用路を備えた道路

自転車専用道路は、市街地の既存道路を活用するほか、マリキナ川に沿って16キロ整備されています。因みに、この地域は沿岸低地のため過去に何度も台風による洪水の被害を受けてきました。

2009年には180年に一度と言われる熱帯暴風雨により、マニラ首都圏は大規模な洪水に見舞われました。マリキナでは市役所の1階が水没したほどです。現在、円借款により護岸建設や堤防建設が進められています。自転車道は、災害の発祥地を市民の憩いの場に変える目的も兼ねているのだそうです。

マリキナ川沿いの自転車専用道路
マリキナ川沿いの自転車専用道路
自転車専用道路の路面サイン
自転車専用道路の路面サイン
マリキナ川沿いの貸し自転車店
マリキナ川沿いの貸し自転車店

続いて市庁舎と議事堂を訪れ、ガズマン市長を表敬訪問し市庁舎を見学しました。老朽化と市民サービスを充実させるため、建替え計画が進んでいるそうです。

マリキナ市庁舎内部
マリキナ市庁舎内部

地庁舎の次は近隣にある公設市場を視察しました。元々は自由市場で、1950年頃から建ち並び始めたとのこと。現在は公設となり、屋根を備えています。生鮮食品や衣類、日用雑貨が安価に買えるため、大勢の市民で賑わっていました。

市場の一角には市の保健所が管轄するマリキナ食品研究所があります。ここでは、飲料水や調理済みの食品の品質を国の基準で検査するとともに、食の安全について研修を行っています。その甲斐もあり、フィリピンで最も清潔な市場と呼ばれています。

生鮮食品を扱う一角
生鮮食品を扱う一角
衣料品や日用雑貨を扱う一角
衣料品や日用雑貨を扱う一角
マリキナ食品研究所
マリキナ食品研究所

続いて環境マネジメント局が管轄するリサイクルセンターを訪問しました。2000年の環境廃棄物処理法に基づき設置された施設で、生ゴミを堆肥にしたり、燃えないゴミを分別し資源として企業に売却しています。中でもビニールや発砲スチロールは舗装材としてリサイクルされていました。

生ゴミを堆肥にして販売
生ゴミを堆肥にして販売
リサイクル材による舗装材
リサイクル材による舗装材

最後に訪問したのは、健康都市の象徴たるマリキナ市健康都市センターです。ここは保健所と教育の機能を備えており、歯科やクリニック、リハビリテーション、薬局、保健事務所にくわえ、健康プロモーション専用フロアーでは健康増進や疾病予防、禁煙、薬物等をテーマとする展示を行っています。展示コーナーはどれも分かりやすく、健康都市を普及啓発することに役立っています。

健康食の展示コーナー
健康食の展示コーナー
禁煙の展示コーナー
禁煙の展示コーナー

健康都市連合理事会

最終日となる三日目はマリキナ市役所にて、健康都市連合の理事会が開催されました。

今回参加したのは、韓国のウォンジュ市、香港の沙田(サーティン)区、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のイラワラ、シンガポール、マリキナ市、神奈川県大和市、そしてNGO健康都市活動支援機構でした。

決算や活動など事務局からの報告の後、第6回国際会議(香港支部沙田特別行政区)の報告、来年開催される第7回国際会議(韓国原州市:ウォンジュ)の計画、フィリピン支部設立の準備報告等が続き、当機構からは2015年国際支援事業として食をテーマとする日本での視察ツアーの計画が発表され、連合の国際活動の一環として承認されました。

健康都市連合理事会
健康都市連合理事会

理事会終了後は、マリキナ靴博物館を見学しました。

市は100年以上にわたり靴産業で栄えています。最近は中国やベトナムなど安価な大量生産品に押されて最盛期の8割まで売り上げが減っていますが、品質が優れているため、海外から高級品を求めてくる人々が多いとか。

この博物館はイメルダ・マルコス元大統領夫人の靴を展示している事でも有名です。3000足もの婦人靴をコレクションしていたと言われている靴の内800足が展示されています。

マリキナ靴博物館
マリキナ靴博物館
イメルダ・マルコス元大統領夫人の靴の展示
イメルダ・マルコス元大統領夫人の靴の展示

フィリピンの人口は約1億人。東南アジア諸国連合(ASEAN)では人口2億5千万人のインドネシアに次ぐ大国です。注目すべきは、人口が毎年2%ずつ増加していること。そして、平均年齢が23歳と諸外国と比べ圧倒的に若いことです。貧困や経済格差など問題は山積していますが、若い労働力に支えられ今後飛躍的な経済成長を果たすことが疑いないでしょう。