「気づいて自分ごと化」して「いつまでも動けるカラダ」を!

健康寿命を損なう要因「動きの衰え」対策に、自治体・NPO・企業が連携して取り組み始めた!

「いつまでも動けるカラダ」応援セミナー

イオンモール幕張新都心グランドモール1階で開催されたセミナー
イオンモール幕張新都心グランドモール1階で開催されたセミナー

いまや自治体にとって焦眉の課題である「健康寿命の延伸」。しかし、市民一人ひとりがこれを「自分のこと」と受けとめ日頃からしっかり取り組んでいる、とは言いがたいのが実状です。

 こうした中、気軽に参加して体の衰えに早めに「気づき」、健康づくりの「きっかけ」を生む格好のイベントが開かれました。10月15~16日、イオンモール幕張新都心(千葉市)で開催された「いつまでも動けるカラダ」応援セミナーです。認定NPO法人健康都市活動支援機構が主催、千葉県が後援、花王株式会社・イオン株式会社が特別協力と、行政・NPO・企業の連携で実現しました。

「神経から筋肉への伝わり」の衰えを防ごう!

隣接して測定コーナーが設けられた
隣接して測定コーナーが設けられた

「セミナー」と「測定」で構成されるこの催し。まず「いつまでも動けるカラダ」応援セミナーでは、スライドに映像も交え、「動きの衰え」とその対策が次のように説明されました(講師は花王ヒューマンヘルスケア研究センター ヘルスケア食品研究所主任研究員の柳沢桂子氏)。

花王ヒューマンヘルスケア研究センター ヘルスケア食品研究所主任研究員の柳沢桂子
花王ヒューマンヘルスケア研究センター ヘルスケア食品研究所主任研究員の柳沢桂子氏

 ――日本では平均寿命と健康寿命の差が、男性で約9年、女性で約12年もあります。要介護・要支援状態になる一番の原因は、神経、筋肉、骨、関節などの障害で、歩行や日常生活に支障を来すこと。運動器症候群(ロコモティブシンドローム)です。

 体は、神経から筋肉への指令が伝わることで思い通りに動きますが、加齢や運動不足によって「動け」の指令が筋肉に伝わりにくくなると、動きの衰えやロコモを招きます。この「神経から筋肉への伝わり」が急激に低下するのが、50~60代です(右図参照)。

男性94名/JA Faulkner et. al. Clin Exp Pharmacol Physiol を基にしたイメージ
男性94名/JA Faulkner et. al. Clin Exp Pharmacol Physiol を基にしたイメージ

「伝わり」の衰えを防ぐには、食事と運動がポイント。食事は栄養をバランスよく摂取。運動は「毎日プラス10分動く」ことで、ロコモや認知症、生活習慣病のリスクを低減できます――。

こう呼びかけたセミナーの締めくくりは、座ったまま簡単にできる「伝わり体操」です。楽しそうに手足を動かす参加者の皆さんの笑顔が印象的でした。


構えることなく、「座ったままできる! かんたん・毎日1分!」の「伝わり体操」(監修:京都学園大学吉中庸子教授)。「神経から筋肉への伝わり」を維持することが狙い

簡単な測定で「気づき」と「きっかけ」が


「歩行測定」には認定NPO法人健康都市活動支援機構の千葉光行理事長も参加。出力された「歩行年齢」、歩き方の特徴、ワンポイントアドバイスの説明に耳を傾け、肯いていました


「動き年齢測定」は椅子に腰掛けて、10秒間足踏みと、20秒開閉のテスト(左)。その回数で、「動き年齢」がわかります。測定結果をもとにスタッフが説明(右)

「歩行測定」に参加された方々に、感想をうかがってみました。

 「ショッピングをしていてセミナーを知り、参加してみました。歩くときに左足が強い、とのこと。左利きだったので納得。これから歩くときの重心に注意したい」(60代前半女性)。

 「今年70歳なのに、歩行年齢が『60歳』と分析されてうれしい。歩行特徴が『がに股』、また「将来気をつけたいポイント」として『尿もれ』が指摘されたが、いずれも少し気にしていたので、歩行測定だけでこんなことが分かるなんて、正直驚きました。運動機能の衰えもわかったので、励みにしたい」(70歳男性)。

 「最近、左足・左膝に痛みや違和感があったけれど、『左足負担型』の歩きだとわかりました。『もう少し右足でもしっかり地面を蹴るように意識しましょう』とのワンポイントアドバイスも出たので、これからは歩き方を意識したい」(60代後半男性)。

 「動き年齢」の参加者からは、「『動き年齢』の測定をやってみて、途中で足の動きが混乱……。神経から筋肉への『伝わり』って大事なんですね」(50代後半女性)。

 

 簡単な測定とすぐにわかる結果・アドバイスが好評で、皆さん、自分の歩きや動きの衰えに「気づく」とともに、衰え防止に踏み出す「きっかけ」とされたようです。
 なお、「歩行年齢」、「動き年齢」は、それぞれ学術的な調査データを参照して、年齢に換算しているのだそうです。

「動き年齢測定」の結果シート
「動き年齢測定」の結果シート

※「10秒足踏みテスト」の結果から「動き年齢」がわかる。

※「20秒開閉テスト」の結果から「動き年齢」がわかる

 

「歩行測定」の結果シート
「歩行測定」の結果シート

現在の「歩行年齢」と「将来、気をつけたいポイント」がわかりやすく、図示される。

ワンポイントアドバイスがテキストで示される

歩行測定の数値と、歩行特徴の型が表示される

往路と復路の圧力シート上の足圧が示される

 

『衰え対策』の『自分ごと化』のお手伝いを!

花王 ヒューマンヘルスケア事業ユニット フード&ビバレッジ事業グループ 岩野 雄一ブランドマネージャー
花王 ヒューマンヘルスケア事業ユニット フード&ビバレッジ事業グループ 岩野 雄一ブランドマネージャー

今回のセミナーの特徴は、50~60代になると「神経から筋肉への伝わり」が急激に低下し、体の動きが衰えることに着目し、逆に「いつまでも動けるカラダ」づくりを提案していること。この「伝わり」について10年以上研究を重ねた知見を持ち、「特別協力」でセミナーと測定を全面的にバックアップした花王に、お話を伺いました。

 「要介護・要支援の原因で一番多いのが、ロコモなど運動器に関するもので、将来はメタボの5倍に達するとの予想もあります。ロコモというと、関節の痛みや骨粗鬆症など、病気の話になりがちです。もちろん病気になったら治療が大事ですが、そうならない段階から日々の暮らしの中で『いつまでも動けるカラダ』を保つことも大事。ロコモの予備世代である50~60代の方々に、予防の視点から衰えに気づき『自分ごと化』していただきたい。この催しがその『気づき』になれば、と願っています」。(花王 岩野 雄一ブランドマネージャー)。

民間の知見と活力の積極的活用を!

千葉県健康福祉部健康づくり支援課 瀧口 弘課長
千葉県健康福祉部健康づくり支援課 瀧口 弘課長

「参加された皆さまは体験後、とてもいい表情をされていますね」と手応えを感じる花王・岩野氏は、次のように話を結びました。「ただ、こうした催しは私どもだけでは難しい。今回のように、行政やNGO健康都市活動支援機構の皆さまと手を携えて貢献できればと思います」。

 一方、後援した千葉県は、「健康ちば21(第2次)」を策定し、健康寿命延伸を総合目標として掲げています。千葉県健康福祉部健康づくり支援課 瀧口 弘課長は「健康寿命延伸の普及啓発をしていますが、県が独自に直接住民の方々と接する機会はなかなか作りにくい。企業とタイアップすることで大きな効果が生まれます。『いつまでも動けるカラダ』というテーマは、県民に注目されやすい。一過性でなく県民に継続して取り組んでいただくように努めたい」と、民間の力に期待を寄せていました。

認定NPO法人健康都市活動支援機構 千葉光行理事長
認定NPO法人健康都市活動支援機構 千葉光行理事長

主催者であるNGO健康都市活動支援機構は、健康都市活動を推進する都市や大学、企業、団体、個人と連携して健康の維持・増進に向けた社会環境づくりを構築・支援する団体です。千葉光行理事長は、都市と企業が手を組む必要性を訴えます。「都市と企業を結び、企業の持つ技術やノウハウで住民を健康にする――そういう事例を作りたいと思い続けていたので、花王さんからお話をいただき、喜んで企画させていただきました。今回のように、自治体が民間企業や我々のようなNGO・NPO団体と組む、そんな新しい取り組みが増えることが望ましいし、またぜひそうする必要があるのではないでしょうか」。

 

 健康寿命延伸をめざす自治体にとって、内容と連携の形、ともに大いに参考にしたいイベントでした。