健康経営の実践は職場・地域の「食」環境改善から!

「しっかり食べて内臓脂肪をためない『スマート和食®』プログラム」を採用した青森銀行。参加職員の88%が内臓脂肪低減!

「ホワイト500」を取得した青森銀行の取り組み

 青森銀行は職員の健康を重要な経営資源と位置づけ、2014年の「あおぎん健康宣言」以来、その増進に積極的に取り組んできました。その取り組みが評価され、2017年2月に「健康経営優良法人」(大規模法人部門)、いわゆる「ホワイト500」の認定を受けました。そしてこの取り組みをさらに進化させるために着手したのが、「食習慣の改善」に着目した健康増進施策です。

職員がプログラムに参加した青森銀行八戸支店
職員がプログラムに参加した青森銀行八戸支店

 銀行には多くの少人数事業所(支店)があり、業務の性格から昼食の時間もまちまちになるため、職域給食施設などの設置が難しいのが実状です。職員は弁当を持参するか、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで弁当、パン、麺類等を購入して食べることが多く、昼食は不規則になりがちです。職場で健康的な食事を摂り、健康意識と健康状態の改善を図るために、青森銀行が採用したのが、花王の「スマート和食」プログラムです。

しっかり食べて内臓脂肪をためない!「スマート和食」

 「スマート和食」プログラムは、メタボリックシンドロームの根源といわれる内臓脂肪に着目し、内臓脂肪を“測って”、食習慣の改善によって“減らす”プログラムです。内臓脂肪をためない栄養バランスで設計されたという「スマート和食」のお弁当を職場で毎日食べながら、自然に健康的な食習慣を身につけていけるのが特徴です。

スマート和食では、カロリーを減らす前に生活リズムと食事の「質」を整えていく。
スマート和食では、カロリーを減らす前に生活リズムと食事の「質」を整えていく。

 「スマート和食」は、花王の内臓脂肪研究に裏付けられた食事法です。国立京都医療センターとの共同研究で、1万人以上の内臓脂肪と生活習慣、特に食習慣を調べた成果に基づいています。内臓脂肪の蓄積には食事の「量」=カロリーだけでなく、食事の「質」(栄養のバランス)や「時間」が影響していることを見出し、食事の「量」はあまり減らさずに「質」の改善によって内臓脂肪を減らす健康的な食べ方を考案しました。「スマート和食」の栄養バランスで設計した食事は腹もちがよく、食後に代謝されて発散される熱量が大きい等の特色があります。「量」を減らさないので、満足感を持って食事を続けられます。

 食事の「質」は3つの栄養バランスがポイント
食事の「質」は3つの栄養バランスがポイント

 花王はすでに自社のいくつかの社員食堂で「スマート和食」に基づくランチを提供しており、食事としての高い満足度を得ながら、内臓脂肪が減るという成果を得ています。さらに2015年12月からの3ヵ月間、青森県弘前市内の3つの企業で、弘前大学COI(文部科学省が支援する研究開発プログラム「センター・オブ・イノベーション」の拠点の1つで、弘前大学を中核とする)の研究活動として、「スマート和食」プログラムの社会実装実験を実施。参加者の8割で内臓脂肪が減少し、6割で血圧が改善したという報告があります。

 青森銀行は弘前市での研究活動に参加しており、その際に体験したプログラムが職員に好評で、成果も出たことから、健康経営の具体的施策として採り入れることにし、花王へ発注するに至りました。

 

プログラムが始まった!

 2017年4月、八戸市内の青森銀行13支店で50名の職員を対象に、3ヵ月間のプログラムがスタートしました。

 まず4月26日に初回測定会とセミナーを開催、内臓脂肪を測定します。初めて測る自分の内臓脂肪の数字を見て驚き、「自分ごと」という意識が高まったところで、「しっかり食べて内臓脂肪をためない目からウロコの食事法=スマート和食」のセミナーを受講しました。セミナーでは、管理栄養士が「内臓脂肪をためないくらし方」と「内臓脂肪をためない食事」を説明。現在の自分の食習慣がどのくらいそれと違っているか、チェックします。そこで「スマート和食」弁当の登場です。「明日から毎日届くこのお弁当をお手本に、どんな食べ方をしたらよいかを“食べて学んで”ください」。

専用の機器を用いて職場で内臓脂肪を測定 ※カメラはテレビ局の取材
専用の機器を用いて職場で内臓脂肪を測定      ※カメラはテレビ局の取材
セミナーでスマート和食の食事の「質」を学ぶ
セミナーでスマート和食の食事の「質」を学ぶ

 翌日から、毎日職場に「スマート和食」の食事の「質」を実現した日替わりの「スマート和食」弁当が配達されました。カロリーは650kcal前後で、いわゆる“減量食”には見えないボリューム。価格は税込み500円です。この弁当は、製造する地域の業者さんのレシピをもとに花王が監修し、一定の栄養バランスの範囲におさまるように調整しています。

セミナーでの「スマート和食」弁当の紹介
               セミナーでの「スマート和食」弁当の紹介
配達された弁当の一例。十五穀ごはん、鶏肉の漬け焼き、すき昆布ソテー、揚げ茄子のみそかけ、 オクラの香味和え、新キャベツの塩麹和え(658kcal)。こんな弁当が日替わりで職場に届く。
配達された弁当の一例。十五穀ごはん、鶏肉の漬け焼き、すき昆布ソテー、揚げ茄子のみそかけ、 オクラの香味和え、新キャベツの塩麹和え(658kcal)。こんな弁当が日替わりで職場に届く。

 3ヵ月の期間中、参加者はお昼に「スマート和食」弁当を食べつつ、週に1度、内臓脂肪をためない「くらし方」と「食卓」がどれだけ実践できているかをセルフチェック票で確認。朝晩の食事も含めて実践度を高めていきます。セルフチェックには月に1度、管理栄養士からフィードバックがあり、アドバイスと励ましを受けられます。2ヵ月目と3ヵ月目に内臓脂肪の測定があり、変化を確認しました。

参加者の88%が内臓脂肪低減!

 3ヵ月後の7月14日にプログラムは終了。成果の報告会が、7月20日に青森銀行八戸支店内で開かれました。

  報告会では、花王の高瀬秀人氏(基盤研究セクター 生物科学研究所 上席主任研究員)から、取り組みの成果と今後について話がありました。今回の取り組みでは、体重の平均値は75.9kgから74.7kgに減少。腹囲は平均値92.9cmから90.4cmと2.5cm減少。そして内臓脂肪は参加者の88%の方で低減し、平均値125cm2から113cm2へと12.4cm2減少しました。

 内臓脂肪が減少したのは、参加者の皆さんが「スマート和食」弁当を参考に、朝晩の食事も少しずつ改善させた成果です。期間中の「スマート和食」弁当の購入率は87%、出張などの人を除き、ほぼ毎日購入して食べていました。セルフチェックのスコアも着実に改善し、「スマート和食」の食べ方が身についてきたことを示していました。

参加者が語る実感と好結果の理由

 参加した青森銀行八戸市内支店の方々(20代~50代)に、率直な感想を伺ってみました。

「ふだん食べている昼食より腹もちがよく、『懐かしい』感じ」(男性)

 「『スマート和食』弁当は、ふたん食べている昼食より腹もちがよく、夕方までもちました。無理したという感じがなく、『懐かしい』感じでした。夕食時、最後の締めをラーメンからそばに変えたり、ご飯も白米から麦飯に変えたり。料理するのは妻なので(笑)、よく話し合いをしています。測定の数字がすぐにわかると、いい動機づけになります」

「はじめに測った内臓脂肪の数字にショックも、徐々に改善し喜び」(男性)

 「初回に測った内臓脂肪が100cm2前後でショックでしたが、それが少しずつ減る喜びを感じました。食べているだけなのに、数字が改善されてよかった。これに運動もプラスと言われるとちょっと……。サラダを選ぶとき、好きなツナではなく海藻にしてみたり、食べるものを意識するようになりました」

「昼食以外にも気を遣い、内臓脂肪率も体重も減りました」(女性)

 「内臓脂肪が10cm2、体重も3kg減りました。主婦をしているので、ある程度の知識はありましたが、『スマート和食』弁当を食べることで、昼食以外にも影響が出ました。1週間ごとの食生活チェックで意識づけができ、計画をもって進めることが日常的になりました。今回はこれで終わりですが、できれば続けたいですね」

「少しの工夫だけで、数字が改善。健康を考える上でよかった」(男性)

 「まだ20代なのに、はじめに測った内臓脂肪率が100cm2に近く、危機意識を持ちました。実際に取り組んだのは、昼食を食べること以外では、朝夕食で白米の量を少し減らし1膳で終わらせたこと。動けるときは体を動かしたこと。それくらいでも数字がはっきり減り、よかった。内臓脂肪を測ったのは初めてですが、体力、健康を考える上でよかったと思います」

「昼食の弁当がきっかけで、朝夕食の内容も変わった」(男性)

 「昼食弁当がきっかけで、朝夕食の内容にも変化が出てきました。質と量を意識した結果、内臓脂肪と体重の減少につながりました。単身生活をしているので、食生活の結果はすべて自分の責任です(笑)。こういう機会があるのはいいことで、むしろこれをスタートと考えています」

「毎週の食生活チェックで、食べ方を注意するようになった」(女性)

 「結果は少しいい方向になりました。内臓脂肪測定と食事を一緒にやるのが、効果的な組合せだと思いました。食生活のチェック項目を毎週見るので、それを頭に置いて食べ方に注意するようになり、生活習慣を見直すよいきっかけとなりました」

 

 このように、参加者の感想から、好結果が生まれた理由が見えてきました。

地域のリーディング・カンパニーとしての使命

今村宗幹氏
      今村宗幹氏

 青森銀行人事部の今村宗幹氏(人事課 主査)に伺いました。

 「弊行は2014年の『あおぎん健康宣言』以来、職員の健康を重要な経営資源の一つと位置づけ、様々な健康増進施策に取り組んできました。また、地域の金融機関・リーディングカンパニーとして、全国一の短命県脱却に向けて、自ら率先して健康経営に取り組み、青森県の健康増進の気運を高めることも、1つの使命と考えてきました。他方、地方公共団体等とも連携し、健康増進に取り組む企業として認定を受けた事業者様に対する融資制度の創設や、認定企業にお勤めの従業員様向けに、個人ローンの金利優遇を行う等、健康増進の取り組みを応援させていただいております」

 

 そして、氏は今回のプログラムを次のように振り返ります。

 「3ヵ月間無事に継続でき、効果がはっきり現れ、いい取り組みになりました。終了後の参加職員アンケートでは、全員が『有益なプログラムだった』と評価し、3ヵ月間の弁当摂取期間についてもほとんどが『負担感なく続けられた』と感じ、プログラムの満足度が非常に高かったことがわかります。また、7割以上が『昼食以外の食習慣も変えた』とし、食習慣以外に運動習慣や喫煙などの『生活習慣を見直した』職員も3割程度おりました。これは、単にヘルシーなお弁当を食べたということではなく、セミナーや定期的な内臓脂肪測定、食事チェックを通して、健康に関するリテラシーが高まったことを意味しており、非常に有益な成果が得られました。それぞれの職員が本プログラムで得られた経験・知見を今後の生活でも継続することを期待するとともに、行内の保健師、健康保険組合とも連携し、参加者をフォローアップしていきたいと考えております。今回、花王様とのご縁ができ、素晴らしい成果が得られたので、今後も連携を視野に入れながら、食事プログラムだけでなく生活習慣の改善等を強化し定着させたいと願っております」

伝統的な和食の良さを現代の食卓にスマートに応用して

 「スマート和食」の考案者であり、弁当の監修も行った花王の高瀬秀人氏(前出)は、今回の結果について次のように話します。 

高瀬秀人氏
      高瀬秀人氏

 「3ヵ月間で、内臓脂肪の平均が12.4cm2減り、減少した人の割合も88%でした。これはたいへんな数値です。また、腹囲の平均値も2.5cm減りました。ベルトの穴1個分に相当しますから、実感した方が多いはずです」

 今回のプログラムの特徴を、氏は強調します。

 「『スマート和食』弁当の特徴は、食べる量を減らすのではなく、バランスを変えること。バランスよく食べると、カロリーは自然に調整されます。伝統的な和食のよさを現代の食卓にスマートに応用したものですので、参加者のご感想にあったように、腹もちのよい食事で、無理なく続けられます。しかも3ヵ月間、このお弁当を続ければ、どんな食事がよいのか経験的にわかるようになるものです。それが朝食、夕食の食べ方にも反映されます。また、内臓脂肪測定や食生活チェックも組み合わせることで、『自分ごと化』し、やる気を生み、意識も変わり、食生活習慣全体を見直せます。

 幸い青森銀行の皆様の熱心で積極的なご参加をいただき、大きな成果を得ることができました。この取り組みをさらに拡大し、青森銀行様はじめ、青森県の『健やか力』向上の取り組みをさらにご支援できれば、と考えております」

 職場や地域で健康的な食事を提供しようという試みは各地で行われています。しかし味やボリュームの点で満足度が低かったり、価格が高かったり、そしてなによりも、購入する動機を作れなかったりで、うまく普及しないケースも見られます。そのような中、今回の取り組みでは、

① 会社が率先して食環境を整備

② 内臓脂肪を測って、これを減らすという目標を見える化

③ 食事の「量」を減らさず、「質」で改善するという画期的な技術

④ 社員食堂がなくても、弁当を毎日配達

という特徴によって課題を解決できる手応えが感じられます。健康経営、地域の健康づくりを具体的に進めるうえで、様々なヒントを与えてくれるものとなりました。

 

 ※「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

 ※「スマート和食」は、花王株式会社の登録商標です