“しっかり食べて内臓脂肪をためない”食事法で生活習慣病の予防・改善を!

内臓脂肪に着目した研究から生まれ、“ポジティブ”で画期的な食事法と評価される「スマート和食®」。そのマスター講座が大好評で、全国から受講者が集まります。人気の秘密を探りました。

全国からプロフェッショナルが参加する人気講座

 「しっかり食べて太りにくい」がキャッチフレーズの食事法講座が、今人気を集めています。東京での開催にもかかわらず、北は北海道から南は九州まで全国各地から応募があり、キャンセル待ちも生まれるほど。参加するのは、管理栄養士、看護師、保健師、健康運動指導士、健康管理士、ケアマネージャーなど、地域・職場の最前線で健康づくりや食事指導を担うプロフェッショナルたちです。受講料を自己負担で参加される方も少なくないそう。

  名づけて「スマート和食マスター講座」。「職場に戻ってポジティブな食事指導ができる」「目からウロコの内容」と受講者が目を輝かせています。いったいどこに人気の秘密があるのでしょうか。11月4、5日に、主催する花王㈱本社(東京)の会議室で開かれた講座を取材してみました。 ※「スマート和食」とは、伝統的な和食の健康価値を現代の食事にスマートに応用するもの。

「スマート和食」の誕生

 講座内容は大きくは、「スマート和食」の理論編(考え方と科学的裏づけを学ぶ)と、実践編(栄養指導の現場で実際に活かす)の2つになります。

 はじめに、「スマート和食」が生まれた経緯の説明です。そもそもなぜ花王は「スマート和食」を開発し提唱するようになったのでしょうか。

 

 同社は以前から内臓脂肪に着目した健康改善研究に取り組んできました。内臓脂肪の蓄積が高脂血症、糖尿病、高血圧、肝機能低下などさまざまな生活習慣病をもたらします。その元となる「内臓脂肪型肥満」を減らすべく研究を重ねてきました。脂肪を代謝する力を高め、体脂肪低減を助けるヘルシア(特定保健用食品)等の商品も、こうした中で生まれています。

 同時に、この研究過程で開発されたのが内臓脂肪計測技術です。それまでX線CTでしか測れなかった内臓脂肪が、どこでも容易に測定できる画期的な機器の誕生です。

 花王は、これを利用して11,000人を超える内臓脂肪を測定するとともに、食生活習慣、食事実態の調査もあわせて実施して、その膨大なデータから、内臓脂肪蓄積と生活習慣のつながりを紐づけることができたのです。こうした研究から、「スマート和食」の食事法が開発されました。

 ヒトでの代謝実験や継続摂取試験によって、「スマート和食」の基準でつくられた食事は、「しっかり食べても太りにくい」ことが確かめられ、国民的課題である生活習慣病の予防・改善に向けてこれを広く提唱するに至ったのです。

 

理論編で内臓脂肪について詳しく知る

 講座の1日目前半は、「内臓脂肪研究と『スマート和食』の開発」がテーマ。講師の森 建太氏(農学博士・花王ヘルスケア食品研究所上席主任研究員)から、スマート和食の食事法が内臓脂肪の低減をもたらす科学的裏づけについて説明されました。

 長年の研究から導き出されたのが、内臓脂肪をためない食事の「質」と「時間」です。中でもとくに重要なのが、「質」における3つの「比」です。

 (1) タンパク質/脂質の比

 (2) 食物繊維/糖質の比

 (3) オメガ3/脂質の比


 この3つ栄養素の「比」をできるだけ高めることが「質」のポイントです。加えて、「時間」は夕食時間と朝食に、それぞれポイントがあることが科学的に示されました。

“ポジティブ”な栄養指導を!

 1日目午後は、いよいよ実践編「スマート和食を栄養指導に活かす(1)」。講師は小島美和子先生。“追っかけファン”もいるほどの人気講師の登場です。

 「栄養学は科学です。科学に基づけば、からだは必ず変わります」。冒頭、小島講師は力強くこう語り、「太らないためには食を減らすしかない」という従来の常識を覆し、「しっかり食べて太らない」スマート和食を提唱します。

 日本人、特に男性の肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は増えていますが、逆に日本人の摂取カロリーは実は減り続けています。このパラドックスは、摂取カロリーよりさらに消費カロリーが減っていることを示しています。消費カロリーというと運動不足を考えますが、実はそれだけでなく、栄養バランスや生活リズムの乱れによるところも大きいのです。

 「減らす」「抑える」とネガティブになりがちな食事指導を、「ポジティブな食べ方の提案」に変える小島先生の講義は、まさに「目からウロコ」と受講者が感想を漏らす、画期的な内容でした。

 先生は、「食べることを我慢しましょう」ではなく、ポジティブな指導への転換を強調します。それが「しっかり食べて太らない」「スマート和食」の真髄です。同じ摂取カロリーでも、栄養素の組合せ=「質」によって「代謝」が変わり、内臓脂肪蓄積を左右します。「もし栄養バランスや生活のリズム、運動を考えずに、摂取カロリーを減らそうとすると、全体に低いカロリーをさらに低くしなければなりません。それでは体調の悪化を促すだけです」。

  食事の「量」を減らす前に、「質」と「時間」を見直せば、代謝が高まって消費カロリーが増え、摂取と消費のバランスが改善する――それがスマート和食のねらいです。この食事の「質」と「時間」をわかりやすく指導する「食事5ヵ条」と「くらし方3ヵ条」などが示されました。

企業導入の成功事例の紹介も

 1日目の最後は、青森県で「スマート和食」を導入した企業の成功事例の報告です。

 地域のリーディングカンパニーである青森銀行が全国一の短命県を脱却すべく、率先して「健康経営」に取り組み、スマート和食の食事法を職場で導入し、しっかり成果を上げたことを映像も交えて紹介。職場で栄養指導に取り組む担当者には、たいへん参考になる事例でした。

  なお、この日は講座修了後、希望者は内臓脂肪測定を体験しました。


 1日目のランチに出されたお弁当は「スマート和食』のコンセプトを実現。内臓脂肪がたまりにくいのに、満足感が得られるものです。

・「見た目がシンプルで、これでお腹いっぱいになるのかなあと思いましたが、食べるとかなり満足感がありました」(看護師)

・「おいしかったです。満足感がありました。夕方までお腹が空かず、これなら間食をしなくてもいいな、と感じました」(保健師)

「質」を「比」でとらえる感覚を演習で習得

2日目のランチも実食後に演習で検討
2日目のランチも実食後に演習で検討

  2日目の「スマート和食を栄養指導に活かす(2)」は、グループに分かれて、役立つ演習です。

  実際の献立を例に、その問題点と改善案を各グループで討議します。この日に提供されたランチ(弁当)やコンビニ食も献立例としてチェックする、たいへん実践的な演習です。グループごとに発表する参加型実習を繰り返して、スマート和食の考え方の胆である「比」(バランス)に基づく献立づくりをしっかり身につけました。

 小島講師の最後のメッセージ「口に入るものが変われば、からだは確実に変わります。栄養指導を楽しいものにしてください!」を、受講者の皆さんはしっかりと受けとめていました。


 こうして、2日間にわたる講座は、主催者花王からの修了書の授与をもって締めくくられました。

講座の成果を職場・地域の健康づくりへ!

 修了書を手に晴れやかな表情の受講者の皆さんに、感想を伺いました。

 

・「データがしっかりしているので、職場で自信をもって指導できる」(保健師)

 「花王さんのデータがしっかりしているので、会社に持ち帰り自信をもって保健指導を進められそうです。量やカロリーを『抑える』のではなく、『高いところでバランスをとる』という小島先生のお話は目からウロコでした。『食べていけないのではなく、どう食べるか』が大事なのですね」

・「ポジティブな食べ方を提案できるのがよい」(管理栄養士)

 「病院に勤務する管理栄養士としては、たいへん参考になりました。講座で提供された資料を使えば、経験の浅い管理栄養士でも成果につなげられそうです。『栄養指導』と聞くと、受ける側は『量を減らす』『食べてはいけない』とマイナスに受けとめがちですが、ポジティブな視点で食べてよいものをたくさん教えてあげれば、皆さんに喜ばれると思います」

・「コンビニ利用の多い単身者にも指導しやすい」(看護師)

 「看護師として企業で保健指導をしていますが、目からウロコの情報をたくさん学びました。対象者に合わせた指導をしていく必要がありますが、応用できるさまざまなケースを幅広く学べました。職場にはコンビニ利用率の高い独身男性が多く、コンビニ食での改善事例も提示され、たいへん勉強になりました」

・「カロリー計算より『比』のほうが皆さんに伝えやすい」(保健師)

 「栄養学は日進月歩なのでブラッシュアップしなければ、と思い参加しました。専門知識を持たない一般の人に伝えるとき、カロリー計算より『比』の方が伝えやすいので、勉強になりました。こういう機会が定期的にあるとうれしいです」

・「会社の社員食堂で活かしたい」(健康管理士)

 「自分の知識に足りないところがあることがわかりました。3つの『比』の話がたいへん印象に残りました。企業で健康管理をしているので、会社の社員食堂で活かしたい」

・「主婦へのアドバイスにも役立つ」(管理栄養士・健康運動指導士)

 「学生時代に学んでから時間が経っているので、参加してよかったです。企業で主婦の方を対象に健康・栄養指導に当たっています。健康番組でオススメのものばかり食べてメタボの方もいらっしゃいます。3つの『比』も含め今回の情報はわかりやすく、指導に活かせそうです」

・「地域の高齢者を支えるために」(看護師・ケアマネージャー)

 「介護支援センターでケアマネをしていますが、地域の高齢者を支える活動に活かしたいです」

 

 以上の感想に見られるように、最先端のデータと知見に基づくスマート和食講座は、「比」を重視するのでわかりやすく、現場での実践に活かしやすいのが特徴です。食を減らすのではなく、質の改善なのでポジティブな方向で取り組めます。満足感があるので継続しやすいのも特色。講座は資料・ツールも豊富なので、スキルアップにも格好の場と評価されているようです。

 この講座をすでに受講した専門職の方々は、各地で健康づくりに活用したり、食事提供ビジネスに活かしている、とのこと。生活習慣病の予防・改善に貢献する人財育成の講座は、今後さらに人気を集めそうな勢いです。

 ※「スマート和食」は、花王株式会社の登録商標です 

 ※「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。