健康都市オンラインセミナー(第2回)

健康都市連合日本支部は2021年度事業として、「持続可能な健康都市の展開のための指標の活用」に、WHO健康都市・ 都市政策研究協力センターと連携して取組んでいる。多面的に「健康都市度」を評価する指標を作成するとともに、指標を活用することで、健康都市に係る各都市の強みや弱みを明らかにし、施策の検討や魅力あるまちづくりの推進に寄与することをめざしている。本稿では、基礎となるデータ活用等の理解を深めるために開催されたオンラインセミナー第2回の概要を報告する。

健康·医療·介護の質、効率、公正性の確保と向

今中 雄一(京都大学大学院教授)

健康と医療介護の社会システムを研究テーマとしている。財政がひっ迫する中で、効果的で効率的な健康医療介護システムの再構築が不可欠である。そのためには、地域における健康や医療介護のパフォーマンスを見える化しなければならない。

 

例えば、医療の質を地域ごとに可視化すると、かなりの地域差が存在することが見えてくる。「医療の質の地域格差是正に向けたエビデンスに基づく政策形成の推進」プロジェクトでは、全国の大規模医療データであるナショナルデータベース(NDB)を用いて、特に脳梗塞や急性心筋梗塞に関して各地域の医療の質指標をわが国で初めて実測・可視化した。心臓や脳の救急診療、がん診療など資源集中の必要な領域では、限られた財源・資源で、地域の医療を向上させるためには、「拠点化と連携強化」が重要である。(図1)

図1
図1

そうして可視化された情報を医療者や行政、市民を含めた関係者が共有する必要がある。地域で脳梗塞への対応が上手くいっているのかどうかを、客観的データで共有しなければ、自地域の課題もわからず施策を推進できないためだ。

 

地域包括ケアシステムや介護では、市町村レベルやさらに小さい中学校区レベル等での評価指標が有効だ。介護の指標を見ると、市民活動や地域密着サービスに力を入れている市町村の方が、施設サービス優位の市町村よりも、要介護度の進行を遅らせていることがわかる。(図2~4)

図2
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図3
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図4
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また、病気の治療には医療行為が必要だが、人々の健康状態に大きな影響を与えるのは、環境、特に社会的な環境である。個人要因のみならず、ライフスタイルやコミュニティのありかた、都市の環境が重要である。

 

従って、健康寿命の延伸に取り組むには、医療と保健のサービスの充実に加え、社会インフラの充実や、社会経済活動の活発化も欠かせない。これらを包括的に見える化し、健康に関わる諸要因を把握していくことで、健康まちづくりを一層効果的に進めることができると思われる。(図5)

図5
図5

まちづくりに係る研究者が研究科を超えて集まり、京都大学では「超高齢社会デザイン価値創造ユニット」を立ち上げている。健康・医療にとどまらず社会心理学、経済学、法学、建築学、情報学など領域を横断してまちづくりを研究する領域横断的学際ユニットである。データ活用によるサービス等開発や、社会のしくみを可視化し超高齢社会のデザイン・実装に貢献することを目指し、産官学民共同事業PEGASASも進めている。(図6)

図6
図6

まちづくりには様々な側面があるが、最近では、諸施策で社会参加が重視されている。地域のサロン的な活動も含まれる。健康なまちづくりの仕組みを支えるのは地域住民だ。だが、データや情報が共有されていないのではないか。地域地域で、その地域に住む人々の健康度や、どの程度社会参加が行われているのかの程度、ウォーカビリティ(歩きやすさ、徒歩圏内に生活上必要な要素が揃っている程度)なども含め、全国一律でデータ化して共有することで、健康なまちづくりを、より根拠を以て推進することができるようになるのではないか。(図7)

図7
図7

今中 雄一(いまなか ゆういち)氏

 

京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療経済学分野教授

 

東京大学医学部卒(医師・医学博士)ミシガン大学にてPhD、MPH 取得。研究領域は医療政策・マネジメント、医療・介護システムの質と経済性。WHO、IHF、OECD のプロジェクトメンバー、国際学会ISQua 理事、ASQua 理 事長、医療経済学会理事長、COCN(産業競争力懇談会)推進テーマ「健康医療介護の質指標とまちづくり情報基盤」 リーダーなどを歴任。

現在は、社会医学系専門医協会理事長、厚生労働省地域医療構想アドバイザー、京都大学 超高齢社会デザイン価値創造ユニット長、健康視点まちづくりの産官学民コンソーシアム PEGASAS 会長、認知症にやさ しい都市評価体系構築の厚生労働科学研究の代表など、データ駆動の健康都市づくりに係る研究開発に従事。