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「運動不足」改善は〝手軽にできるウォーキング〟から「歩行力」の「見える化」を続けて成果が! ~「健康長寿で元気なまち」へ、官民一体の取り組みを継続。町長の率先垂範も大きな力に!~

桑折町役場。〝平成の大合併〟が進む中、あえて独自の道を貫いてきた桑折町は、「住み続けたい街 自治体ランキング」(不動産会社調査、福島県版)で、直近2年連続でトップに。
桑折町役場。〝平成の大合併〟が進む中、あえて独自の道を貫いてきた桑折町は、「住み続けたい街 自治体ランキング」(不動産会社調査、福島県版)で、直近2年連続でトップに。

 福島県北部に位置する桑折町(伊達郡)は、人口約11,000人。仙台伊達藩発祥の地で、〝自然と歴史と文化の町〟を謳っている。

 高齢化率37.8%の同町では、健康づくりを施策の大きな柱の一つとし、とくにウォーキングを重視。花王(株)の「歩行力改善プログラム」を採用して4年間継続し、着実に成果を上げている。

 官と民の連携で健康づくりを進める好事例をレポートする。

 

大震災とコロナ禍による「運動不足」が課題に

 「町長就任の半年後に東日本大震災が起こり、原発災害にも見舞われました」。こう振り返るのは、髙橋宣博町長です。

 「平時に作成した方針では町づくりが描けなくなりました。総合計画を練り直し、健康づくりを町の大きな柱の一つに打ち出しました。そして、心を一つにして復旧から復興へと歩を進めて10年、やっと皆で喜びを分かちあおうという矢先、今度はコロナ禍が起こり、生活が一変しました」

 大震災以降、福島県では生活習慣の変化を余儀なくされ、メタボリックシンドロームなど、県民の各健康指標が悪化。さらに、コロナ禍が重なり、桑折町では、運動習慣が「1回30分以上ない」「1日1時間以上ない」人、いわば「運動不足」の人の割合が、県や全国の平均と比べても多いことが明らかになりました(「国保データベースシステム」)

「歩行力改善プログラム」を採用

昨年末、町は「日本一健康なまち桑折」をめざして、「ヘルスアップタウンこおり」を宣言
昨年末、町は「日本一健康なまち桑折」をめざして、「ヘルスアップタウンこおり」を宣言

 こうした中、健康寿命の延伸に向けた健康づくり推進のため、町では2020年に、医・学・産・民・官が一体となったコンソーシアム「こおり健康楽会」を設立。生活習慣病をもたらす大きな要因となる「運動不足」の解消を本格化させました。

 同町が健康づくり策の一つとして着目したのがウォーキングです。道具が不要で手軽に取り組め、年齢を問わず無理なく始められるので、運動習慣が身につかない人にも最適です。

 そんなとき、花王の「歩行力改善プログラム」を知りました。

 福島県では、大震災以降の健康指標悪化の中、2017年度から「市町村先駆的健康づくり実施支援事業」を始めました。生活習慣病予防のために、民間企業が蓄積するノウハウやアイディアを活用して市町村が実施する意欲的な健康づくりを、県が財政的に支援する事業です。

 そのメニューに花王の「歩行力改善プログラム」を見つけ、桑折町は即座に手を挙げました。2020年のことです。

 

「歩行力」を測定して自分の健康を「見える化」

2023年11月の測定会の様子(同町保健福祉センターで)
2023年11月の測定会の様子(同町保健福祉センターで)

 「健康づくりを始めるとき、まず自分の健康状態を知ること、〝気づき〟が大切ですね」、髙橋町長はそう指摘します。「自分の課題に気づいて、変える努力をする。その結果、どう変わったのか。こうした一連の動きが『見える化』されていると、参加者のモチベーションが上がります」。

 「歩行力改善プログラム」は、そんな狙いにぴったりの内容です。

 はじめに「歩行の『質』測定会」で、自分の歩行状態を測定。歩行のくせやリスクに気づき、アドバイスを受けます。以降数ヵ月、ホコタッチ®(専用歩行計)を着けて、課題を意識しながら歩きます。月に1回程度ホコタッチステーション(今回は、町役場窓口に設置)に出向き、タッチすれば日ごとの活動結果や歩行生活年齢、歩行安定・脳活性などの数値が出力されます。

 プログラム最後の測定会で、改善結果が示され、参加者は花王のスタッフから評価説明とアドバイスを受けます。


(左から)この日の測定会で、髙橋町長(66歳)は圧力シート上を歩行。ホコタッチ®に記録されたこの1ヵ月間の歩行データでは、「歩行生活年齢」40歳、「総合判定A」など、詳細なデータが明らかに。また圧力シート歩行による結果もすぐに出力される。判定で「歩行バランス年齢」は27歳、「歩行スピード年齢」は20歳! 最後に、歩き方のくせも細かく示され、花王スタッフからのアドバイスに、町長は納得!

 「歩行力」の実状を知り、課題を意識して運動し、成果を確かめ、次のモチベーションにつなげる――この一連の流れが「見える化」されているのが、「歩行力改善プログラム」の特色です。

 そして、得られたデータは、花王が総合的に集約・分析・評価し、町が共有します。

経年的な視野での取り組みこそ

プログラム期間中、参加者データの集計から、歩数、歩行速度ともに増加傾向が示された(解析対象者=40名、平均年齢=62.1歳、花王作成)
プログラム期間中、参加者データの集計から、歩数、歩行速度ともに増加傾向が示された(解析対象者=40名、平均年齢=62.1歳、花王作成)

 一般に、歩数・歩行速度・歩幅は、加齢とともに低下します。しかし、桑折町のプログラム参加者のデータをみると、歩数と歩行速度がむしろ増加していることがわかります(右表参照)。つまり、加齢に伴う歩行力の低下を抑えて、むしろ強化していることが見えてきます。

 とくに、「歩数」だけでなく「歩行の質」に着目するので、歩行力を高め、フレイルや生活習慣病、認知症の予防が期待できます。

 こうした成果を受けて、町では県の「市町村先駆的健康づくり実施支援事業」が2年間の期限を迎えた2022年以降もこのプログラムを続け、今年度で4年目を迎えています。

 プログラム継続に至ったのは、これまでの手応え、参加者からの強い要望だけが理由ではありません。健康福祉課の佐久間ミチル課長補佐は、長期的視野の必要性を強調します、「健康づくりは、すぐに結果が出るものではありません。単年ではなく、経年的にみることが大事です」と。

 こうした町の確固たる方針のもと、町民と行政が一体となって取り組みを進める中、コロナ禍にありながらも、町ではメタボ該当者・予備群の率が顕著に減り(2021年度は県内第2位)、特定健診実施率・特定保健指導実施率は県や全国平均の数値を大きく上まわるほどになりました。医・学・産・民・官が一体となったコンソーシアム活動の結実と言えそうです。

好結果を産み出した要因は

 桑折町の「歩行力改善プログラム」が成果を上げている要因は、主に4点挙げられます。

  1. 行政が、町民の健康課題を、国保データベースシステムから「運動不足」の改善にはっきり据えたこと。
  2. その課題解決に、町民が取り組みやすい「ウォーキング」を選んだこと。参加者は設備も準備も不要で、老若男女誰もが手軽に始められる。
  3. その際、民間事業者(花王)が培ってきた科学的知見、ノウハウを活用したプログラムを採用したこと。自分の健康状態に気づき、実行し、結果をチェック――これらのプロセスが「見える化」されるので、参加者のモチベーションが上がる。
  4. 自治体と民間事業者が当初から緊密に連携し、自治体の健康課題を共有。官と民の信頼関係の構築が好結果を生みだしている。

 さらに、つけ加えるべきは、髙橋宣博町長の姿勢です。自らホコタッチ®を着けてのウォーキングを日々続け、今では「歩行バランス年齢」27歳、「歩行スピード年齢」20歳に(2023年11月測定会)。施策の旗振り役だけでなく、自分ごととして率先し、課題を意識して笑顔で「歩行」する町長の後ろ姿が、町民や職員の健康づくりの機運を一層盛りあげる大きな力になっているようです。


いつもベルトに装着しているホコタッチ®を手に取る髙橋町長。昼過ぎ段階で、すでに7,000歩を超える。「歩数だけでなく、歩行スピード年齢など『歩行の質』が印刷されるので励みになる」と語る

信頼関係を築いて官と民が協働

 最後に、担当した方々に「歩行力改善プログラム」のこれからについて語っていただきました。

 佐久間ミチル課長補佐(健康福祉課)は、健康づくりは単年でなく経年でみることが必要とした上で、こう話します。「花王さんは、長い目でみてくれます。そこがありがたい。しっかりしたエビデンスがあってご提案いただいているので、信頼してお願いしています。これからも民間事業者さんのお力を借りながら、町民の健康づくりに取り組んでいきます」。

 

 健康福祉課の武氣昂平主事(健康増進係)は、民間事業者の力の活用を強調します。

 「花王さんのネームバリューが大きいですね。町民の皆さんは、花王さんだから、と興味をもってくださいます。歩行バランス年齢や歩行スピード年齢の若返りを喜んでいらっしゃいます。歩き方のクセを知りたい人は多いはずです。このプログラムをきっかけに、健康に関心のない方にも参加していただけるように、これからも続けて広げていきたいですね」

 一方、花王GENKIプロジェクト・マネジャーの上原智美さんも、同町の熱意を受け、決意を新たにしています。「桑折町では、『運動不足』という課題と向きあい、健康を科学的にとらえ、町民の皆さんに提示して健康づくりを推進しています。そうした姿勢がとても素晴らしいと感じました。花王としても、国の一大課題である健康寿命延伸に向けた健康づくりを、今後もしっかりサポートさせていただければ、と願っています」。

 長期的視点に立ち、官と民が信頼関係を築いて連携する健康づくり―――これからの取り組みに期待がますます膨らみます。

※「ホコタッチ」は花王株式会社の登録商標です。



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